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男性名の作り方・名乗らせ方 |
基本編〜普通のアラブ人の名前を作るには(1)
シリア・レバノンやエジプトなど、社会が部族単位で動いていないような地域のアラブ人は、以下のような形で自分の名前を名乗ります。
Muhammad Ali Ibrahim
ムハンマド アリー イブラーヒーム
・ムハンマド=本人の名前
・アリー=父親の名前
・イブラーヒーム=祖父の名前
上の図を見ても判るように、部族意識が強い地域以外に住むアラブ人は通常「自分の名前」+「父親の名前」+「祖父の名前」を組み合わせたフルネームを名乗っています。このタイプの名前を作る場合は、人名リストに載っている名前を3つ組み合わせるだけで済みます。
例えば、漫画や物語でアラブ人のキャラクターを登場させると仮定してみます。そこに兄弟が登場する場合、彼等は連れ子でない限り父親を共有していますから、本人の名前を除いた部分は全部同じになります。たとえば、3人の兄弟がいた場合、フルネームは以下のようになります。
Muhammad Ali Ibrahim
ムハンマド アリー イブラーヒーム
Ahmad Ali Ibrahim
アフマド アリー イブラーヒーム
Mahmud Ali Ibrahim
マフムード アリー イブラーヒーム
この方式で先祖の名前をズラズラと書き連ねることは出来ますが、普通「フルネームを言ってください」と言われた場合は、上の方式で3つの名前を言うことになります。
【フルネームを使わない場合】
通常フルネームは使われず、知人の間では本人のファーストネームだけを使います。ファーストネーム以外にも言う必要がある場合は、父親の名前を付け足します。
従って、上の兄弟の場合、自分の名前を名乗るときは、以下のようにします。
Muhammad Ali
ムハンマド アリー
Ahmad Ali
アフマド アリー
Mahmud Ali
マフムード アリー
【敬称について】
アラブ世界には、日本のように苗字を名乗る制度はありません。そのため、最後に来る名前を苗字のようにして「イブラーヒームさん」と呼ぶことはありません。人を呼ぶ場合は、本人の名前で呼びかけます。
職業や地位に基づいた敬称は使われますが、身近かつ対等な立場にある人同士が「さん」に相当する語をつけて呼び合うことはありません。MissやMrに相当する単語はあっても、「さん」に相当する単語はないので、上の人物の場合は「ムハンマド」と呼ばれることになります。
【同じ名前の人が何人もいたら】
同じ名前の人がクラスといった同一集団に何人もいる場合は、父親の名前を使って区別します。たとえば、ムハンマドいう名前を持つ学生が3人いるクラスがあったとします。その場合、それぞれは以下のような形でクラスメートから呼ばれることになります。
Muhammad Ali
ムハンマド アリー
→「ムハンマド アリー」もしくは「アリー」
Muhammad Ahmad
ムハンマド アフマド
→「ムハンマド アフマド」もしくは「アフマド」
Muhammad Ibrahim
ムハンマド イブラーヒーム
→「ムハンマド イブラーヒーム」もしくは「イブラーヒーム」
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基本編〜普通のアラブ人の名前を作るには(2)
シリア・レバノンやエジプトなど、社会が部族単位で動いていないような地域のアラブ人の名前には、別のバリエーションがあります。
それは、本人と父親の名前の後、つまり3番目の部分に祖父やそれよりも前の先祖が営んでいた職業の名前や、彼の特徴に由来する名前を持ってくるというバリエーションです。これは、上の例よりも日本の苗字にかなり近いと言えるかもしれません。
また、下で紹介する部族バージョンのように「イー」で終わる一種のファミリーネームを名乗る人たちがいます。これらの名前は、一族の出身地などに由来するのが普通です。
【このタイプの名前の例(1)】
Muhammad Ali Haddad
ムハンマド アリー ハッダード
「Haddad」というのは「鍛冶屋」という意味の名詞です。このパターンの名前がついている人の場合、「ムハンマド アリー」というよりも「ムハンマド ハッダード」として名乗る方が普通のようです。
【このタイプの名前の例(2)】
Muhammad Al-Atrash
ムハンマド アル=アトラシュ
「Al-Atrash」というのは「耳の聞こえない」という意味の名詞に定冠詞がついたものです。この名前から、彼の祖父やそれ以前の祖先に、耳の不自由な人がおり、そのあだ名が本人の名前のかわりに子孫によって名乗られることになったことが推測できます。
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部族編〜部族に属するアラブ人の名前を作るには(1)
アラビア半島など、部族と各人とのつながりがはっきりしているような地域では、部族名を含んだ名前を名乗る人を多く見かけます。基本編で紹介したような名前を持つ人も見かけますが、そうした細かい違いは、現地の事情をある程度知らないと判らないようです。
【パターン1】
Muhammad Ali Al-Ghamidi
ムハンマド アリー アル=ガーミディー
・ムハンマド : 本人の名前
・アリー : 父親の名前
・アル=ガーミディー : 部族名に由来する苗字に似た名称
部族名に由来する名称は、通常部族名に長母音の「イー」を付け加えることによって作られます。通常こうして作られた名称には、定冠詞「アル(Al)」がつけられます。
注:これを、部族に属さない普通のアラブ人が、先祖の職業や一族の出身地に関連付けて使うこともあります。「○○イー」と終わっているニスバ名(部族や土地に「イー」という音を付加した一種のファミリーネーム)は、アラビア半島以外にも、シリア・レバノン、エジプトなどでも見られます。
[例]
この名称を作るための文法は意外とややこしいので、ここではいくつかの例を挙げるのみにとどめておきます。
定型
・ガーミド(Ghamid)族 → ガーミディー(Ghamidi) → アル=ガーミディー(Al-Ghamidi)
・ハルブ(Harb)族 → ハルビー(Harbi) → アル=ハルビー(Al-Harbi)
・ムタイル(Mutair)族 → ムタイリー(Mutairi) → アル=ムタイリー(Al-Mutairi)
・カフターン(Qahtan)族 → カフターニー(Qahtani) → アル=カフターニー(Al-Qahtani)
変型
・アッ=ダワースィル(Al-Dawasir)族 → ドゥーサリー(Dusari) → アッ=ドゥーサリー(Al-Dusari)
・クライシュ(Quraish)族 → クラシー(Qurashi) → アル=クラシー(Al-Qurashi)
【パターン2】
Nawwaf Bandar Al-Timyat
ナッワーフ バンダル アッ=ティムヤート
・ムハンマド : 本人の名前
・アリー : 父親の名前
・アッ=ティムヤート : 部族内にいた先祖の名前に定冠詞をつけたもの
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部族編〜部族に属するアラブ人の名前を作るには(2)
アラビア半島では、以下のような名前を見かけることがしばしばあります。
Isa bin Salman bin Hamad Al Khalifah
イーサー ビン サルマーン ビン ハマド アール ハリーファ
・イーサー : 本人の名前
・ビン:「息子」という意味の名詞
・サルマーン : 父親の名前
・ハマド : 祖父の名前
・アール ハリーファ : 「ハリーファ家」という意味のいわゆる家名
アラブ諸国の支配一族などの名前は、上のような形になります。日本では「ビン」という語が使われていますが、本来のアラビア語発音に忠実な形で記すなら「ブヌ(bnu)」となります。しかし、日本の学術書では、「ブヌ」の元になった名詞の読み「イブン(ibn)」を使い、「某・イブン・某・イブン・・・」と表記されているのが普通です。
「ビン(息子)」と単語は、息子と父親の名前とが対等に並んでいる場合に、その間にはさまれて使われます。しかし、この単語の前に息子の名前が来ず、単に「某の息子」という用法に使われる場合は、本来の「イブン(ibn)」となります。
従って、上のような人物の場合本人の名前で呼ばれる場合は「イーサー」と、サルマーンの息子という立場で呼ばれる場合は「イブン・サルマーン」と呼ばれることになります。
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発展編〜男性名の様々なパターン
アラブの男性は本人の名前以外にも、あだ名などで呼ばれることがあります。歴史上の人物などの場合、これらの名称がともに記載されているのを、歴史書や人名辞典などで見つけることが出来ます。
ここでは、本人の名前も含め、アラブにはどのような名前が存在するのかとまとめてみたいと思います。
【イスム(ism)】
「イスム」はアラビア語で「名前」という意味の名詞です。その名の通り、これは本人の名前を指します。英語などのフォームに「ファーストネーム」と書かれている欄があった場合、この「イスム」を記入することになります。
【ナサブ(nasab)】
ナサブは、血統や親族関係を示す名称のことを指します。「イブン(=ビン)(〜の息子)」という単語と父親の名前を組み合わせて「イブン・某(〜の息子)」とするのは、このナサブの用法に当たります。
【クンヤ(kunya)】
クンヤは、「アブ(Ab)(父)」という単語と息子の名前を組み合わせたような通称のことを指します。「アブー・バクル」といった名称はこのクンヤに当たります。この「アブ」という名詞は特殊で、後に来る名詞によって所有格支配されると、長母音を伴うようになります。「アブ」という単語が主格にあれば「アブー(Abu)」に、所有格にあれば「アビー(Abi)」、目的格にあれば「アバー(Aba)」と発音が変わります。
Abu Bakr
アブー バクル
バクルの父
本人に息子がいない場合も、適当な名前を持ってきて「アブー・某」と呼ばれる場合があります。イスラーム初期のサハーバ(教友)の一人「アブー・フライラ(小猫の父)」は、無類の猫好きからこの名で呼ばれるようになったという逸話を持つ人物です。また、パレスチナのアラファト氏の持っているクンヤ「アブー・アンマール」は、イスラーム初期に信仰を守って家族共々苦しんだアンマールという人物に由来するものです。
【ラカブ(laqab)】
ラカブは敬称のことで、その人物の功績や権力を讃えてつけられたり、その人の身体的特徴をもとにつけられたりします。
Shams Al-Din
シャムス アッ=ディーン(→シャムスッディーン)
宗教・信仰の太陽
その人物の功績、権威を讃えてつけられるタイプの名前の例
Al-Jahiz
アル=ジャーヒズ
目玉の飛び出た
中世の有名な文学者のラカブ
【二スバ(nisbah)】
このニスバは、部族名、先祖の出身地、先祖の職業などから作られる名称で、元になる名詞に長母音「イー」をつけることによって成り立っています。通常こうして作られた名称には、定冠詞「アル(Al)」がつけられます。
部族名が元になっている場合
・ガーミド(Ghamid)族 → ガーミディー(Ghamidi) → アル=ガーミディー(Al-Ghamidi)
・ハルブ(Harb)族 → ハルビー(Harbi) → アル=ハルビー(Al-Harbi)
地名が元になっている場合
・ティクリート(Tikrit) → ティクリーティー(Tikriti)
・バグダード(Baghdad) → バグダーディー(Baghdadi)
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