マレー語には6つの母音があり、5つの文字で書き表されます。e の文字は2つの母音を表します。
文字 | 音 | 説明 |
---|---|---|
a | ア [ɑ] | 日本語の「あ」と同じように発音して大丈夫です。 |
e | ウ [ə] | 曖昧母音。日本語の「う」より少し口を縦に開いて発音します。e の文字は通常、この音です。昔の綴り法では、ĕ と書いていました。 |
e | エ [e] | 日本語の「え」と同じように発音して大丈夫です。辞書や教科書では é と表記し、[ə]の音の e と区別することがあります。e の文字が曖昧母音なのか é なのかは、単語ごとに覚えていくことになります。e の文字の大半は曖昧母音ですので、é の場合に特に注意を払うとよいでしょう。 |
i | イ [i] | 日本語の「い」と同じように発音して大丈夫です。 |
o | オ [o] | 日本語の「お」と同じように発音して大丈夫です。 |
u | うぅ [u] | 口笛を吹くように、口をすぼめて発音します。日本語の「う」とは違う音です。 |
マレー語の子音には、マレー語固有の子音と外来語を通じて入ってきた借用子音の2種類があります。2文字で表記される場合にも、音としては1つであるという点に注意して下さい。
文字 | 音 (_a) | 説明 | 例 |
---|---|---|---|
p | パ [p] | 日本語のパ行と同じように発音して大丈夫です。強く息を出してはいけません。 | pipi「頬」 |
b | バ [b] | 日本語のバ行と同じように発音して大丈夫です。 | babi「豚」 |
t | タ [t] | 日本語のタ行と同じように発音して大丈夫です。強く息を出してはいけません。ti は「チ」でなく「ティ」、tu は「ツ」でなく「とぅぅ」と発音します。 | tetapi「しかし」, tipu「だます」, itu「それ、あれ」 |
d | ダ [d] | 日本語のダ行と同じように発音して大丈夫です。di は「ヂ」でなく「ディ」、du は「ヅ」でなく「どぅぅ」と発音します。 | data「データ」, di「~で」, padu「まとまった」 |
k | カ [k] | 日本語のカ行と同じように発音して大丈夫です。強く息を出してはいけません。 | kaki「足」 |
g | ガ [g] | 日本語のガ行と同じように発音して大丈夫です。 | gigi「歯」 |
c | チャ [tʃ] | 日本語のチャ行と同じように発音して大丈夫です。強く息を出してはいけません。ci は「チ」と発音します。 | cuci「洗う」, Mac「3月」 |
j | ジャ [dʒ] | 日本語のジャ行と同じように発音して大丈夫です。 | jadi「なる」, caj「チャージ、料金」 |
s | サ [s] | 日本語のサ行と同じように発音して大丈夫です。強く息を出してはいけません。si は「シ」でなく「スィ」と発音します。 | sudu「スプーン」, siku「ひじ」, pedas「辛い」 |
h | ハ [h] | 日本語のハ行と同じように発音して大丈夫です。強く息を出してはいけません。 | hati「心」, sudah「もう~した」 |
m | マ [m] | 日本語のマ行と同じように発音して大丈夫です。 | mimpi「夢」 |
n | ナ [n] | 日本語のナ行と同じように発音して大丈夫です。 | nanti「後で」 |
ny | んにゃ [ɲ] | 舌の先を下の歯の裏にしっかりと付けて出す鼻の音です。日本語のニャ行のように聞こえますが、違う音です。 | nyanyi「歌う」 |
ng | んぁ [ŋ] | いわゆる鼻濁音です。「あんがい(案外)」というときの「ん」の音です。 | ngiau「ニャー(猫の鳴き声)」, mengiau「(猫が)鳴く」 |
l | ラ [l] | 英語の l の音と同じ音です。舌の先を上の歯の裏にしっかりと付けて出すラ行の音です。 | lagu「歌」, mahal「高価な」 | r | ら [ɾ~ʁ] | 日本語のラ行と同じように発音して大丈夫です。 | ragu「疑う」 | w | ウァ [w] | 英語の w の音と同じです。唇を丸めて出す、軽いウの音です。 | wah「わぁ(驚きや感心を表す感嘆詞)」 | y | ヤ [y] | 日本語のヤ行と同じように発音して大丈夫です。 | yang「~なやつ(関係詞)」 |
借用子音の一部(特に kh、gh)は固有子音で代用されることもあります。
文字 | 音 (_a) | 説明 | 代用される固有子音 | 例 |
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f | ファ [f] | 英語の f の音と同じです。上の歯を下唇にあて、息を出して発音する無声音です。 | p | féri「フェリー」, taraf「レベル」 |
v | ヴァ [v] | 英語の v の音と同じです。上の歯を下唇にあて、息を出して発音する有声音です。 | b | virus「ウイルス」 |
z | ザ [z] | 日本語のザ行と同じように発音して大丈夫です。zi は「ジ」でなく「ズィ」と発音します。 | なし | zakat「喜捨」, zirafah「キリン」, ustaz「ウスタズ(男性の宗教指導者)」 |
sy | シャ [ʃ] | 日本語のシャ行と同じように発音して大丈夫です。syi は「シ」と発音します。 | なし | syampu「シャンプー」, syif「シフト」 |
kh | ハハァ [x] | カ行の音を出すつもりでハ行を発音します。寒いときに手を温めるために出す「はぁ」という息の音です。 | k, h | Khamis「木曜」, khas「特別な」, tarikh「日付」 |
gh | (ぁ)がぁ [ɣ] | ガ行の音を出すつもりでハ行を発音します。ガ行の音をぞんざいに発音するとこの音になります。うがいをするときの音のように聞こえます。 | g | ghairah「欲望」, baligh「成人した」 |
マレー語には3つの二重母音があります。二重母音は、綴り字上は母音文字2文字で現れますが、音の上では1つとみなされます。最初の文字で表される母音の後に2つ目の文字で表される母音が軽く、子音のようになって続きます。
文字 | 音 | 例 |
---|---|---|
ai | アィ [ay] | pandai「賢い、上手い」 |
au | アぅ [aw] | kalau「~なら」 |
oi | オィ [oy] | amboi「まぁ」(感嘆詞) |
ai、au、oi のうち二重母音となるのは、これらが音節末に現れる場合のみです。これ以外の場合は、2つの母音が別々の音節に現れるものです。この場合、発音の際に2つの母音の間には、つなぎの子音が入ります。つなぎの子音は、ai、oi では y 、au では w です。
kain (= ka + y + in) 「布」
laut (= la + w + ut) 「海」
poin (= po + y + in) 「ポイント」
つなぎの子音は、ai、oi、auだけでなく、i と u が関係する他の母音連続でも入ります。i を含む場合には y が、u を含む場合には w が挿入されます。
dia (= di + y + a) 「彼(女)」
dua (= du + w + a) 「2」
これらの子音は音節の最後では、口の構えだけとり、息を出しません。
tutup「閉じる、閉める」
siap「準備ができた」
jawab「答える」
selamat「安全な」
lihat「見る」
kad「カード」
tidak「いいえ」
awak「君」
beg「鞄」
日本語では区別されることのない、音節の最後の「ん」は、マレー語では区別され、意味の違いにつながります。語の終わりに来るときには特に注意が必要です。
enam「6」
malam「夜」
faham「理解する」
lapan「8」
makan「食べる」
hutan「森」
petang「午後」
orang「人」
hutang「借り」
音節の最後の r は通常、発音せずに前の母音を伸ばします。
nombor「番号」
khabar「知らせ」
pergi「行く」
語の途中に現れる ng + 母音は、同じ音節に属し、いわゆる鼻濁音となります。ng が n と g に別れ、ガ行の音になることはありません。
dengar (= de + ngar) ドゥンァー(×ドゥンガー) 「聞く」
tengah (= te + ngah) トゥンァ(×トゥンガ)「真ん中」
tangan (= ta + ngan) タンァヌ(×タンガヌ)「手」
ガ行の音になるのは、語の途中に ngg が現れる場合です。この場合、ng + g のように分割され、ng でなくg が後に続く母音と同じ音節に属すことになります。
tinggal (= ting + gal) ティンガル 「残る」
minggu (= ming + gu) ミンぐぅ 「週」
tunggu (= tung + gu) とぅンぐぅ 「待つ」
同じ母音が連続する場合、続けて発音するのではなく、途中で息を止めます。
maaf「ごめん」
saat「瞬間、秒」
Jumaat「金曜」
diikat「縛られた」
diingatkan「思い出させられる」
外来語と一部の例外を除き、語根(=辞書の見出し形)の最後の a の文字は、曖昧母音のウ[ə]の音になります。
nama「名前」
saya「私」
ya「はい」
silakan (= sila + -kan)「どうぞ」
語根の最終閉音節(子音で終わる音節)の中の i および u の文字は、それぞれエ[e]、オ[o]と発音することが多いです。
putih「白い」
masih「まだ」
balik「帰る」
bilik「部屋」
kuil「寺」
wakil「代表」
sabit「鎌」
pahit「苦い」
kelip「瞬き」
tujuh「7」
taruh「置く」
duduk「座る」
datuk「祖父」
tidur「寝る」
timur「東」
kampung「村」
gunung「山」
minum「飲む」
Kuala Lumpur「クアラルンプール」
英語からの借用語は、綴り、発音ともに英語を反映した形となります。英語の a のうちエァ[æ]、エィ[ey]と発音するものは、é [e]で置き換えられます。
kamera ケ[e]メら 「カメラ」
radio れ[e]ディオ 「ラジオ」
restoran れストる[ə]ヌ「レストラン」
video ヴィディ[i]オ 「ビデオ」
doktor ドットゥ[ə] 「医者」
universiti ユ[yu]ニヴスィティ 「大学」
マレー語の単語には、日本語や英語と違い、単語ごとに決まったアクセントがありません。その代わり、音韻的フレーズの最後から2番目の音節が高く発音されます。
sa.ya「私」
na.ma「名前」
Me.la.yu「マレー」
na.ma sa.ya「私の名前」
文の中で述語になる部分以外は、最後の音節が高く発音されます。
Na.ma Me.la.yu sa.ya // Az.nil. 「私のマレー名は、アズニルです。」
日本語では同じ音の組合せでも、高低の違いにより意味が異なってきます。
はし(がまだ上手に使えません。)
はし(が建設される予定です。)
はし(が途切れていて、全部は見えません。)
英語でも同じで、強勢の位置が語ごとに決まっています。
béau.ti.ful ×beau.tí.ful ×beau.ti.fúl