Cambodian Studies, Tokyo University of Foreign Studies

パル・ヴァンナリーレアク詩集 "Brah Cand Khmaer (Khmer Moon)" by Pal Vannarirak

パル・ヴァンナリーレアクの詩を、詩人ご本人による吟唱と共にお楽しみください。

日本語訳:岡田知子。『クメールの月』からも、他の詩を含めてご覧いただけます。

来日講演録「今日に至るまで」(和訳)もご覧いただけます。

詩集『クメールの月』

カンボジア語 text in Khmer (PDF) 音声・動画 sound/video 和訳 Japanese translation
クメールの月 Brah Cand Khmaer(七言歌) 音声 sound1(MP3)・音声吟唱 sound2(MP3 動画 video1(WinMac)・動画吟唱 video2(WinMac 和訳 Japanese translation
悲しき遺跡 Qasu Camlak(プロムクット歌) 音声 sound1(MP3)・音声吟唱 sound2(MP3 動画 video1(WinMac)・動画吟唱 video2(WinMac 和訳 Japanese translation
田んぼの民 Qnak Srae(七言歌) 音声 sound(MP3 動画 video(WinMac 和訳 Japanese translation
母さん Mae(七言歌) 音声 sound(MP3 動画 video(WinMac 和訳 Japanese translation

解説(岡田知子)

カンボジアで最も有名な小説家の一人、パル・ヴァンナリーレアク氏は、今までに多くの詩を作ってきている。その多くは歌謡曲として人々に親しまれている。カンボジアの作家は、小説だけでなく、詩も作ることができてはじめて一人前というようなところがあるようである。

パル・ヴァンナリーレアク氏の初めての詩集である『クメールの月』(2002年)には全部で9編の詩が収められている。このうち4編をここで紹介している。

タイトルになっている「クメールの月」では、カンボジア人の原風景である水田が色鮮やかに歌われている。「悲しき遺跡」は、金銭欲しさから心ない一部のカンボジア人によって、祖先の築いた民族の誇りである遺跡から仏や神の姿が無惨にも切り取られ、外国に売り渡される悲しみをうたったものである。「田んぼの民」は、田んぼとそこで農作業をする村人を見やる詩人の心情が歌われている。季節とともに表情をかえる田んぼ、そこに集まる小魚、蟹、雀、鷺、青々していた稲が鸚鵡色になると、村人たちは小さな鎌を踊らせるようにして刈っていく様子が描写されている。「母さん」は、3人の子どもの母親でもあるレアク氏の慈愛の心を表現すると同時に、自立したレアク氏の今は亡き両親への追慕の歌である。

2002年8月には、スウェーデンのナッショ市で開催された国際詩歌フェスティバルに招待され、そこで同氏が自ら朗読紹介した。なお、『クメールの月』は全編スウェーデン語に翻訳されている。

カンボジアには伝統的な詩形と数多くの吟唱法がある。20世紀初頭に散文で書かれた「小説」というものが登場するまで、文学はすべて韻文から構成されており、作家とは詩人のことであったのである。アンコール王朝時代から伝わるという詩形には5つあり、喜びを表現するプッチョンリリア、怒りを表現するポムノール、争いを表現するボントール・カーク、別れや哀しみを表現するプロムクット、語りや導入部分に使われるカーカテである。その後19世紀には一句が七音節からなる七言歌、同じく八言歌、九言歌、十言歌、十一言歌ができた。その他、頭子音を揃えた詩形、日本のいろは歌に似て文字を一通り使う詩形や、押韻の仕方から「蛙が池の真ん中を飛び越している型」、「鹿が森を歩いている型」、「蓮の花が開いている型」、「冬瓜のつるが藤棚にのびている型」などユニークなネーミングの定型詩もでき、その種類は49種にも及ぶ。いずれも厳格なリズムと非常に複雑な押韻によって構成されている。また吟唱法も詩形によって複数決まっており、多いものでは10種類にのぼる。同じ詩を異なった吟唱法によって楽しむことができるのである。

カンボジア版ラーマーヤナである「リアムケー」を題材にした影絵などの伝統芸能の語りも、この定型詩のうちのいくつかを使う。小学生は国語の教科書に載っている定型詩をこの吟唱法で暗記する。多くの歌謡曲の歌詞はこの定型詩に準じたリズムと韻を踏んでいる。伝統的文化を否定したポル・ポト時代ですら、革命歌はこれら定型詩の作詩法にのとって作られた。

本ページ掲載の吟唱と朗読は、パル・ヴァンナリーレアク氏が東京外国語大学を2003年11月に訪問した際に、学内スタジオにて収録したものである。


作成日:2005年9月06日。改訂日:2012年01月08日。
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