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2023年、明けました!

2023年、無事に新しい年となりました。今年もどうぞよろしくお願いいたしますー。
さて、新春オペラ・バレエ・ガラをウクライナ国立歌劇場管弦楽団と合唱団、バレエ団が公演とのことで、「応援しよう!」と3日の夕方に有楽町へ観に行ってきた。が、そのくらいの気持ちでは軽すぎたことがよくわかった。それはなんとも特異なコンサートであった。
第一部は名曲アリアと合唱だったが、ウクライナ国歌に始まり、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章で締め括られた。真剣な面持ちの指揮者とオケが奏でる音にのせて、50人もの人びとが生身でそこに立ち、どこか重さを漂わせた表情で「歓喜」やさまざまな人生の風景を歌う。そこには、想像をはるかに超える迫力と切実さがあった。第二部のバレエは華やかで美しかったが、その後のカーテンコールになったときのダンサーたちの表情の変化に、気づかないわけにはいかなかった。思いは歌い手の人びとと同じであったのだ。彼らは戦時の母国から束の間離れ、仕事をしに日本へ来ているのだ。仕事が終われば帰国し、ふたたび戦時の日常へと戻るだけである。国際政治には複雑な様相がいろいろあるが、突然に平穏な日々を奪われた彼ら、彼女らには何の罪もない。観客の多くがスタンディングオベーションで長いこと声援を送った。それは舞台に対してと同時に、彼らが生きる闘いに対する声援であり、連帯であった。会場は一体感と熱気に包まれ、拍手はなかなか鳴りやまなかった。
 昨年2月以来の「ロシアによるウクライナ侵攻は」という日々の報道にどこか耳慣れして想像力が鈍磨していたが、一気に世界のリアリティに引き戻された時間であった。

そしてこれまた偶然なのだが、これも戦争関連で、早く観たいと思っていた『ラーゲリより愛を込めて』をようやく調布で観てきた。まだ松の内で映画でもということか、ギリギリに駆け込んだ会場は残席2席ほど、一番前の首の痛くなる席だったが、その分大迫力であった(笑)。今どきの人気俳優も含め錚々たる配役、見応えのあるつくりで、辺見じゅんの名著『ラーゲリ(収容所)から来た遺書』が現代のスクリーンに甦っていた。なんども落涙。ぜひ多くの人びとに観てほしい一作である(当方が頼まなくても、たぶんすでにそのようだが)。
実は、少し前の拙ブログにも書いたとおり、この主人公の山本幡男氏が外大の卒業生である。2020年のちょうどコロナ禍にはいる直前、「外大生と戦争」というプロジェクトへの協力を依頼された際に、この本を教えられて読んだ。名著で何度か映像化もされたというが、当時は本の入手にも少し手間取るほどであった。しかし今回の映画化で、あらためてこの本を手に取る人も多いだろう。さらにご長男の山本顕一氏の『寒い国のラーゲリで父は死んだ』(バジリコ、2022年)も刊行され、また別の側面からとらえる視角が豊富に示されている。上記の「外大生と戦争」が再企画される2023年、じっくりと考えていきたい。

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2023年1月 5日 09:04に投稿されたエントリーのページです。

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