やっとFAKEを観てきた。某森タツ監督さんの新作である。とにかく大評判だというので、いつも開演ギリギリに駆け込みの身にはまだ敷居が高かったのだが、昨日開演20分以上前に到着して、整理番号は131番(きょええ!)だった。かなり前の方だったが椅子があっただけ幸いである。
でもとにかく観てよかった!そしてたくさんの人に観てほしいと思った。というわけでこうしてさっそくオススメを書いているわけだ。ちょうど先ほど、件の目利き友人K氏から「もう観た?まだだったら観た方がいい。年内ベスト候補かも」という連絡をもらって、たしかになーとうなずいている。
新聞その他の映画評がこぞって書くように、ポイントは夫婦愛であり、猫であり、ケーキである。「作曲=音楽をつくる」ということが分解して考えられていくくだりも、たいへん面白い。ふと、昨年11月末に来日したセネガルのラッパー、クルギのメンバーが沖縄のスタジオで夜を徹して一曲をつくっていった濃密な時間を思い出したりもする。しかし圧巻なのはやはり、主人公 -つまり一つの事件によってすべての友人を失い、社会からほぼ抹殺され孤立し、その家族も後ろ指を指されている人物ー にひたすら寄り添い、そのことによってほんとうに多くの強力な相手方と闘うという監督のスタンスであり、またそのスタンスから主人公と監督の間に作り出された独特の関係が主人公と監督の双方、とりわけ主人公の側に変化をもたらし、その結果なにかが生み出されるという物語に観客が立ち会うしくみである。重要なのは、寄り添い、闘うだけでなく、最後のひとつを伴う点である。だからドキュメンタリーは単なるドキュメンテーション(記録化)ではない。うーん、すごい。そのような手法で高い評価を得た「アクト・オブ・キリング」よりも、当方にはずっとしっくりきた。それにしても某テレビ局のスタッフさんとかって、森さんの顔を知らないんだな...。びっくり...