絵や写真の展覧会は、見たいと思っていても見逃すことが多いのだが、これだけは見逃したくなくて、横浜美術館の「ロバート・キャパ&ゲルダ・タロー」展に行ってきた。(パブコメで沸騰した頭を冷やしに行った、ともいえる)連休の最終日でもあり、またちょうど数日前、Nスぺで沢木耕太郎さんの「崩れ落ちる兵士」をめぐる考察の番組もあったからか、かなり多くの人が訪れていた。
同美術館の所蔵をふんだんにいかし、またていねいな解説をつけた興味深い展覧会である。そう、もうひとりのフリードマンとはアンドレ・フリードマン、1913年にブダペストに生まれたロバート・キャパの本名である。われらが(?)ミルトン・フリードマンは1912年アメリカ生まれだが、親の世代に当時のオーストリア・ハンガリー帝国から移住したとのことで、実はキャパとほとんど同年代、そしてフリードマン姓はかの地に多い苗字なのであった。
ともあれ2013年はキャパ生誕100周年で、このような展覧会が開かれたらしい。Nスぺの「崩れ落ちる兵士」をめぐるハナシ、すなわちそれは誰がどこからどのように撮ったのか、それはほんとうに兵士が頭を射抜かれた瞬間だったのか、といったドキュメント/ ドキュメンタリーのお話しも興味深かったが、若い無名の写真家カップルが二人で「ロバート・キャパ」として売り出していくという自己プロデュースのエピソードがおもしろい。それに、キャパ(いや、フリードマンというべきか)はもちろん、カノジョのゲルダ・タロー(はい、日本風の名前をみずからに付けてますがゲルタ・ポホリレという美しい女性、岡本太郎がパリに滞在していた時代ですねー)の写真がとてもいい。あれこれ含め、写真史に大きな一石を投じる展覧会である。じっくり読める論考を収録したカタログも大いに値打ちモノである。