先日、なんでも知ってる卒業生Mちゃんから「『ANPO』を撮ったリンダ・ホーグランド監督が新作を撮った!しかも石内都がテーマらしい」という情報をもらって、相変わらずいろんなことを知ってるなと感動しながら、やはりアップリンクで上映だろうかなどと想像していたら、なんと太っ腹NHKがさっそくBS1で(つまりタダで)放映した。『Dear Hiroshima 』つまり親愛なるヒロシマである。カナダの人類学博物館(MOA)で石内都の「ヒロシマ」展が開催されたことをテーマに、石内や展覧会を観た人へのインタヴューを綴り、2時間弱のドキュメンタリーとなっている。
これがたいへん良かった。被ばくした人々の遺品、とくに色とりどりの衣服などを鮮やかに写した石内の写真がとにかく美しいのが、まず第一の魅力であるが、彼女の語る言葉も仕事ぶりも含蓄深く、でっかいトーテムポールに合わせて設計されたという博物館そのものもすばらしい。途中で出てくるカナダの大学の先生の言葉も印象に残る。いわく、原爆というと人々の記憶に残るのは、きのこ雲の写真ばかりだが、それはきのこ雲の下で何があったかの想像力を人々から奪ってしまうと。もちろん広島の平和祈念館はそれを補うべくヒバクシャの写真や遺品を展示してあるのだが、石内の写真はそこからもう一歩進んで、その直前まで楽しく美しく生きていた人々の生き様を想像させ、再現させるように写真を撮る。「写ってよ!」と念じながら撮るというのだ。遺品は「瓦礫」ではない。その瞬間まで生きていた人の、かけがえのない生の形見である。
放映時間に見ることができず、録画しておいたのだが、同じ日の夕方にホーグランド監督と石内、他2名の座談会が放映される、という予告で録画が終わった。うう、これも観たかったが仕方ない...。こちらももっと早く予告しようよ、NHKさん...残念...