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若者とお母さん革命

昨日は大学の会議を早々に失礼して、「市民・科学者国際会議:放射線による健康リスク」の第二部円卓会議を聴きに行ってきた。3.11直後にとあるメーリスで「日本における放射線リスク最小化のための提言」 (原文はドイツ語)の邦訳者をつのっていたのでお手伝いをしたが、その発信者の松井英介先生がファシリテーター(という呼び名が、なんとも市民運動系の催しものであることを感じさせる)を務められていたからだ。朝からその松井先生による講演を含む講演4本が行われた後の第二部ということで、パネリストたちはややお疲れの様子だったが、声を挙げたい市民の方々が多数来場しており、相当に迫力のある発言を多々展開していた。勇気もらったー(最近そればっかり?)。

興味深いことに、このプロジェクトの呼びかけ人の一人Sさんは、NPOを主宰する某(外大のご近所H)大学の大学院生であるそうだ。弱冠24歳という彼はパソコンを扱いつつ松井さんや他の主催者とずっと進行を切り盛りしており、海外ゲストたちも温かい目を注いでいた。へえ、日本の若者もやる人はやってるじゃん!当方も温かい目を注ぐ気分であった。

3.11以降、日本を変える担い手は母たちであるというのは、広河さんの見方のみならず一般にもそろそろ浸透しており、これをアイスランドの「キッチン革命」などとならべて「お母さん革命」というらしいが、お母さんたちとの連携には、若者もコミットしやすいのかもしれない。「子どもを守ろう」というすっきりした方針で動けばよろしく、ギトギトしたイデオロギーやマッチョは不要だからだ。そういえば福島でお目にかかった男性諸氏も、バリバリ働きつつも「ぼくたち、マッチョじゃないんですよね。気も弱いし…」と言っていたっけ。
さらに思い返せば、3月以降しばらくの間、原発問題を扱って充実の紙面を展開していた『週刊現代』さんが、「女子どもを放射能から守れ」という記事あたりから、トーンダウンしていったことを思い出す。マッチョ男性的にかっこいいはずのその理屈はウケなかった、というかリアリティを欠いて立ち消えたということだろうか。まーわたしはオジサンではないから(えっ ときどきオジサン化するって?)いいのだが、いや、決してよくはない。オジサン的理屈が「女子どもが逃げるとはけしからん」に転化するとすれば、問題の根はかなり深いだろう。小児科ネットのY田先生いわく、福島では心配する人々を相手にしなかったり笑い飛ばしたりするだけでなく、バッシングして退職にまで追い込む「戒厳令」状態がすでに6月ぐらいから出始めて、今や相当の圧力となっているそうだ。

円卓会議の最後に、三春町から避難しているお母さんが発言した。「福島の人々は御用学者になだめられたから逃げないのではなく、『土と生きる、土があれば生きられる』という自信が裏目に出ているのではないかと思います。その土がもうだめになってしまったという事実を、受け入れられないのです」。参加者各位はそれぞれの持ち場で相当に尽力している人々に違いなかったが、一同、水を打ったように静まり返った。かける言葉が見つからなかった。

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2011年10月13日 21:54に投稿されたエントリーのページです。

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