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クーデルカ「プラハ1968」

キエフ報告の続きも書きたいが、今日はちょっと別のことを。7月18日(月)まで東京都写真美術館で開催されている「ジョセフ・クーデルカ「プラハ1968」」という写真展、今日見なければたぶんもう見られないだろうと思い、仕事帰りにダッシュで見てきた。木曜、金曜は20時まで開館というのがありがたい。

1968年8月、ワルシャワ条約機構軍によるプラハ侵攻「チェコ事件」への市民の抵抗を写したこれらの写真は、当時秘密裏にアメリカへ持ち出され、翌1969年に(写真家の生命の安全のために)匿名の写真家の作品として発表されて、ロバート・キャパ賞をとったものである。しかし作者名は容易に特定され、作者がようやく名乗りを上げることができたのは15年後、チェコに残った父が他界した -つまり父に危害が及ぶかもしれないという心配のなくなった― 後の1984年のことであったという。「この写真を一度として見ることのなかった両親に捧げる」という、写真展全体へのキャプションは、亡命し住まいを転々と変えざるを得なかったクーデルカの、祖国への思いを端的に示している。
「プラハの春」とその後の鎮圧という歴史的事実は、よく知られたものであるかもしれない。しかし、写真を通じて再現された歴史的断片の集積は、戦車から立ち上る煙やこびりついた血の匂いまで感じられそうな迫力で、見るものに迫ってくる。かつて加藤周一さんが「言葉と戦車を見据えて」という対比でこれを論じたのは、比喩ではなかった。侵略・鎮圧は文字通り、戦車によって行われたのだ。

図録を買って帰ってゆっくり考えたいと思ったら、売り切れであるという。図録は平凡社から刊行された市販の書籍であるにもかかわらず、在庫切れだそうだ。写真集としての質もきわめて高い。重版されることを強く願う!

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2011年7月14日 23:09に投稿されたエントリーのページです。

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