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永遠の片想い?

多木浩二さんが13日に亡くなられた。ことを14日朝、I先生からの電話で知った。ちょうどその二日前にI先生と、出来上がった『ピエリア』最新号をもってお見舞いに行こうというお話しをして、当方のケイタイ番号やアドレスをお教えした矢先のことだった。『ピエリア』は外大生、特に新入生に向けた冊子だが、今回I先生が企画した、先生たちから勧める新書の特集「ホネノアル新書」(この命名…なんだかな…)において、当方が多木さんの『戦争論』、『天皇の肖像』を担当したのだった。

多木さんの仕事はずいぶん以前から参照させていただいていたが、ちょうど当方が熊本から東京へ移った二〇〇〇年前後、亡命写真家たちの展覧会をやりたいと考えたことがあって、面識もない多木さんにお手紙を差し上げ(あら大胆)、相当にご協力いただいたものの資金繰りがうまくいかずに挫折したのであった(だははは;)。しかしその折に何度かゆっくりお話しをさせていただき、「亡命」のテーマについては大いに盛り上がって、いずれ研究会を積み重ねて本をつくりましょうというご提案もいただいたのだった(!)。それから数年して多木さんと親しいI先生が外大に赴任され、今度はI先生も含めてこのプロジェクトを改めて始動させようというハナシになったのだが、多木さんが体調を崩されており、少し時期をみてと言っているうちに手遅れになってしまった。かくしてこのプロジェクトは「未完」ならぬ「未始動」の、永遠の片想いのようなプロジェクトになってしまった。いや想いはひとたび通じたもののすれ違いにというところか。やはりできることはできるときにやっておかないといけない。

ただ「亡命」という概念、つまり生まれ育った土地や国を永遠に去ることを余儀なくされるということは、2001.9.11以降、世界の中で大きく位相を変えたように思われたのだ。すんなり企画が立てられなくなったのはそのためだ。そしてこのたび、2011.3.11が(少なくとも日本に在住する人々にとって)あらためてその位相を動かした。今度こそ、少し時間をかけてでも、この概念に向き合ってみたいと思う。果たせなかった約束のためにも。

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2011年4月17日 22:03に投稿されたエントリーのページです。

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