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会議通訳 アーカイブ

2009年10月27日

リレー通訳

先日のTUFS通訳シンポジウムのときに、ロシアからの参加者がパネルディスカッションで発言する際に、ロシア語で話しそれをロシア人が英語に逐次通訳をするのを、学生が日本語に同時通訳するという場面がありました。

まったく同じ状況が今日、私も仕事において出現しました。国際会議において、中国人とロシア人の発言者の場合には、それぞれ自国語で発言しそれを同行している(通訳者ではないですが)英語のわかる別の参加者が英語に逐次通訳するのを、ブースの中のプロの会議通訳者である私たちが日本語にするというものです。

TUFS通訳シンポジウムの際にパネルでこの役割にあたった学生は、かなりやりにくいという感想をもったようでした。今日、私もこの立場にたってみて、つくづくその気持ちがよくわかりました。ですがどうも、実際に中国やロシアの参加者の場合、英語でおこなわれる国際会議にでるときにこのようなやり方は、珍しくはないようです。他の参加者の共通語が英語である場合には必然的に言語は英語をキー言語にせざるを得ないのですが、ただし、会議参加者がみな英語ができるのではない、となると、これが次善の策です。ある別のアジアの国の参加者の場合は、英語で発言していましたが、あきらかにネーティブでない英語で発言するのに無理があり、そういう場合は別に英語がより堪能な参加者がいるのであれば、一度自国語で発言して別の参加者に英語にしてもらったほうがわかりやすい、ということも考えられます。

さらにもう一つ、国際会議でこんなこともあるのか、と思った場面がありました。
英語が堪能でない参加者が、たどたどしい日本語で発言するという場合です。そうなると、実はもっと大変であることがよくわかりました。たどたどしい英語の場合、自分にとっても英語は母語でないですし、ある程度ネーティブでない人の英語は聞きなれているところから、何とかやっていけるのですが、たどたどしい日本語を明らかに原稿があって読みあげている場合ーそれが本当にたいへんです。
すでに用意している原稿ですから、文章もそれなりに練ってあります。読んでいる原稿をもらいたいところですが、すべて入手できるとは限りません。

実際に、たとたどしい日本語を英語に同時通訳せねばならない立場になってみて、英語がキー言語の場合、私たち日本人の会議通訳者が日本語から英語に同時通訳したものをリレー通訳として他の言語にしている通訳者の苦労の一端が分かった気がしました。わけのわからない英語になっているところもあるでしょうに、そういうものを他の言語にさらに通訳しなくてはならないというのは、本当に骨が折れるだろうと思いました。

英語でいうように、be in someone else's shoes その人の立場にたってみて、初めて実感できることはたくさん、あります。

それであれば、まだ自国語から英語の堪能なほかの参加者が英語に逐次通訳したものを同時通訳するほうがよい、とつくづく思いました。

さて、根本的な疑問としてなぜリレー通訳が難しいのか。

二つの言語が重なると言うことは、語彙と文法の両方の面でずれが生じるからでしょう。

特に日本語と英語のように文法構造が違う場合(たどたどしい日本語から英語への同時通訳をするはめになって、痛感しましたが)、まず聞き取りのところで構造がよくとれないということになってしまうと、表現の工夫などはまず、やっている余地がありません。一番、単純な文章をただただ、重ねていくしかできない状態に陥ります。

と、文法の問題はとても難しいのですが、語彙でも??と思うものがいくつも出てきます。

それは数学の同心円を重ねる図を思い出してみると、理由が説明できるようにおもいます。

Aという言語からBに通訳されたもの、これはBに通訳する人がAの言語とBの言語の重なる部分の語彙で何か、適切な訳語をみつけてきたとします。

ところが、Aという言語を理解しない言語Bと言語Cの間の通訳者がこの訳語を聞いたときに、どこが言語Aと言語Bの重なっている部分にあたるかがわからず、B言語のこの語彙にのみある意味範疇を、言語Cに訳してしまう危険性があります。

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