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2009年09月 アーカイブ

2009年09月01日

BBC6・10

8月後半は海外に行っていたため、久々のNHKでした。

2週間、まったく放送通訳をしていなかったというのは珍しいこと。しかも、たまにCNNやBBCをテレビでみたものの、ほとんどテレビニュースを見ずに過ごしたため、どんなニュースに出会うかちょっぴり心配しつつ、早朝NHKへ。

ところが、実に心がほのぼのするようないいニュースを担当できました。今日は3番だったので、いちばん最後の話題二つを担当しましたがその一つがこれ。

ヴェラ・リンさんという92歳の、第二次世界大戦中に兵士の慰問で活躍した歌手が、第二次世界大戦開戦から70年の節目の年ということで今年、ベストヒットアルバムを出したところ、それがヒットチャート20位入りをした、という最高齢のベスト20入りを果たしたニュース。

その歌というのが、これ。

We'll meet again

また会いましょう

という歌。

こういうとき、インターネットは便利。

さわりの部分が何度も流れるのですが、実はこの歌、キューブリックの異色ブラックコメディ『博士の異常な愛情』のラストに流れる歌。もともと第二次大戦時にヒットしたヴェラ・リンの懐メロ。

We'll meet again, don't know where, don't know when.
But I know we'll meet again some sunny day.

また会いましょう、どことも知らず、いつとも分からないけれど
でもいつかまた晴れた日に会いましょう

という訳文も載っていました。

朝からほのぼのといい気持ちになれた話題でした。

どうしてこの歌がヒットしたと思うか、と聞かれたご本人、こう答えていたのもよかったです。

Because 'We'll meet again' this is a nice feeling.

nice

これをどう訳そうか、「よい」「素敵」「爽やか」と考えましたが、結局「爽やか」を選びました。

本当に爽やかな話題でした。

2009年09月03日

CBSイブニングニュース

放送の生同時通訳でしかも原稿なし、となると、リポート終わりなど画像がここで切り替わってしまう、という場合は何とか、予測をきかせて映像とあわせて音声を発しなくてはならない。

などと、後から考えてもっともらしく理屈を言うことはできるけれど実際に通訳をするときに、そう考えているかというと、「何とか辻褄をあわせよう」の一点だけのような気がする。そうなると、これは確か米原万里さんの言ったセリフだったと思うけれど「嘘つきは通訳の始まり」であるのだ、、、と今日も反省。

事前に主な項目のランダウンだけは来ているし、放送開始前にちょっとだけリポートの一部が試しに流されることがあるので、今日はハチ公の話が来ると言うのはわかっていた。だけど、ハチ公の話のどんな部分がくるのかはわからない。

うちに帰ってCBSイブニングニュースのHPを開けると、果たしてハチ公のリポートが9月2日(現地時間では2日のニュース)のところのトップに載っていた。

Hachiko: A Tail of Loyalty in Tokyo

東京の忠犬ハチ公の物語

最初の出だしもよく覚えていた。

At a crossroad of busy 24/7 Tokyo, half a million people a day hurry by.

四六時中一日50万人もがせわしなく行きかう東京の交差点。

出だしは、タイトルを聞いていたし何と言っても行き慣れている渋谷の話なのですんなり出来て、ここは大丈夫。

そのあと、こんなセリフが出てくる。

"His gaze looks lonesome," says 11-year-old Shinsaku, "like he knows his owner may not come back."

「寂しそうなまなざしだね」と11歳のしんさく君。「まるで飼い主が決して戻らないのを知っているみたいだね。」

うん、これも11歳の子の口調を思い浮かべながら画面をみながら訳出できていたと思う。

私が特に気にしていたのは、リポートの最後の部分。

あらためてアップされていたスクリプトを読むとこうある。

A dog who was forever lonely for one more pat on the head, one last moment of his master's love.

ですが、レポートの最後であること、確かに最初のしんさく君のセリフと呼応する部分であるということまでは、頭のなかで思い描いたのだけど、口をついてでた私の訳出はこんなものだった、、、

「ハチ公は最も忠実な犬と言えるでしょう」

うーん、「当たらずと言えども遠からず」かもしれないけど、全然「忠実な」訳出でないのは確か。

放送の同時通訳のときは「もとの放送で声が流れているのに声が出てない」状態をなるべく避けるため、そして先ほど言ったように「画面との整合性」を大事にするあまり、特にリポート終わりはなんとかリポート終わりらしくしめようという、さらなる圧力が働くらしい。

事実関係で大事な点、たとえば1925年に飼い主の大学教授が急死したのに、その後10年近くも駅に通い続けた、とか、1934年にハチ公の銅像が作られた、とか、冒頭の50万人とか、数字は同時通訳しながらメモして確認しているので正確にとれていたけど、最後のところはこれではいかにも大雑把。

忠実に訳すとしたら?

「せめてあと一回、ご主人様に頭を撫でてほしい、声が聞きたいと心から願ったハチ公でした。」

ということでしょうか。

最も忠実な犬、あるいは忠犬ということは英語には出てきていません。

通訳していた自分がどうしてそういう訳にしたのか。

理由は二つあったと思います。

一つは、いちばん最初のランダウンのところで、Meet Hachiko, he must be the most loyal dog in the world

ハチ公に会いたい、世界一の忠犬に違いありません。

というのがあって、それが記憶にひっかかっていたこと。

そういえば、

ハチ公に会いましょう。

とせずに、こう訳出したのは「マリリンに会いたい」という映画のタイトルがなぜか、脈絡もなくこのときに頭に浮かんだのでそれにひっぱられたせい。

話がそれましたが、もう一つ忠実な犬という訳出になった理由。

「ご主人様にもう一度会いたい」と切望している描写を聞いてとっさに口から出まかせを、しかも時間以内に何とかピッタリ終わらそう、とプレッシャーで記憶に飛びついた、というのが偽らざる実態でした。

ため息をつきつつ。

ほか今日のニュースで面白かった表現をいくつか紹介します。

SEC(証券取引委員会)が証券詐欺のマドフ被告の犯罪の証拠をもっと早くつかんだはずなのに、見抜けなかったとのリポートの中で出た表現。

jaw-dropping incompetence

あごが落ちそうな無能ぶり

と、文字通りに言ってしまいましたが「驚くほどの」あるいはせめて「口をあんぐり」させられるような無能さ加減、というのが適当だったでしょう。

思わずここまでするか、と言いそうになったリポートは、失業率が高いなかなか就職できない状況のなかで、学歴など経歴を偽ってでも就職をしたいという人が増えていると言うものだった。

英語の表現が、lie their way to jobs

嘘をついて職を手にする

ということでしょうか。

リポートに登場した高卒の女性、高卒では職につけないとあって、架空の大学名の卒業証書を偽造したけどその後10年間、就職はできて、やがて6 figure salary 6桁、つまり100,000ドル以上、日本風にいえば1000万円以上の収入、をとるようになったけど、嘘をついて自分を偽って生きているのが嫌になり、「絶対に嘘をついて生活するなどやめよう」とその経験をもとに本を書いた、という人だった。

stretch the truth

事実を引き伸ばして、とは言わないから「事実を拡大解釈して」とでも言おうか、そういう履歴書を出す応募者も多いから、企業の側もしっかりと確認を怠らないことが大事、とリポートは結んでいた。

もう一つ、世相を表していると思ったリポートは、新型インフルエンザが流行の兆しをみせるなか、学校に配備されている看護士の数が不足しているという話題だった。

2009年09月09日

CNNj at JCTV

弁舌さわやかなオバマ大統領ですが、今週特に注目の2本のスピーチ。
一つは、8月アメリカ全土で繰り広げられた対話集会でもさんざん、とりあげられた医療保険改革についての議会演説。アメリカ時間で今日のはずなので、明日CNNjでとりあげられると、ちょっと楽しみです。

もう一つがアメリカ時間で昨日の昼間に、レーバーデーの休暇を終えて新学期が始まったところで大統領が行った学校の学生に対してのスピーチ。

これが実は医療保険改革についての議会演説ほどではないにせよ、フロリダ州のグリアー共和党委員長が、何で児童・生徒全員に演説をするのだ、全体主義的ではないか、と批判したので話題になっていました。親の中にも、全米の学校に中継するのはどうか、自分はみないなどと言い出す人が出てきたのを受けて、ホワイトハウスは異例なことに24時間以上前に全文を発表しました。内容が学生にしっ
かりと勉強するようにと訴えるものだと明らかになったあとは、グリアー委員長も「問題なし、いいスピーチだ、」と一転して評価。

今日のCNNj のニュースでは全部は放送されませんでしたが、ニュースとしてとりあげられました。

特に印象的だったのが、スピーチを行った高校で、入学した1年生の男子学生が思い切って大統領に質問をしたこと。「父親がなくて育つというのはどうでしたか、父親がいたら違っていたのではと思うことはないですか。」この男子学生、実はいままでは宗教関係のごく小さな集団で教育を受けていたので、全校の学生が数百人以上もいるところで授業と言うのはこの新学期、入学したこの高校で始めてのことだったとか。その初日にこういう個人的な質問をしたというので大きくとりあげられていましたが、大統領も親身に、個人的な質問に答えていたのが本当にしみじみとした印象でした。

もう一つ、面白かったのが女子学生からの質問で、生きている人でも死んでいる人でも、いま一緒に食事ができるとしたら誰と食事がしたいですか、というもの。
大統領、ちょっと時間をおいて考えていましたが、「ガンジー」と答えました。
「もっとも、ガンジーは小食だからそんなに長い時間をかけた食事会にはならないだろうけど」と、ちょっぴりユーモラスに答えていました。

ほか、この日のニュースで面白いと思ったものを二つ。
一つは2009年9月9日という9が三つ並ぶと言うことについて、中国の話題。

In Chinese culture, this is an auspicious day to get married.
With the number nine representing 'purity' and 'longevity'.
It also has the same pronounciation as 'forever'.

なるほど「永久」というときの「久」は日本語でもキュウと同じ音です。

At least 2500 couples are set to marry in Shanghai today. And the busiest time today to marry?
Nine o'clock, nine minutes and nine seconds, of course.

となると、9-9-9-9-9-9、でしょうか。

この話題につられたのだと思いますが、こんな紹介も。

日本での話題でKonkatsu Instructor なる肩書きまで登場。

For a fee, marriage-hunting agencies guarantee you'll meet a certain number of people and they also offer helpful classes.

と、婚活がとりあげられていたのでした。

2009年09月10日

CNNj at JCTV

今日は9時からオバマ大統領の医療保険改革についての議会演説が中継されると待ち構えていたところ、ちょっと拍子抜けでした。中継はされることはされましたが、最初のほうだけであとはスタジオに迎えているゲストの人に内容についてのコメントをもらう、というスタイル。全部はでてきませんでした。

あとでハイライトが一部、ニュースでとりあげられるということはありましたが、オバマ議会演説も、たびたび行われるとあって全部が全部、生中継で放送されるのではない、とあらためて思いました。

むしろ、演説が始まるまでにウルフ・ブリッツァーのシチュエーションルームで加えられた解説が印象的でした。三点、医療保険改革についてのmyth 神話とされることをとりあげ、それが本当かどうかを憲章使用というものです。

*不法移民が対象になる
*高齢者出納税者でない人にとってdeath panel になる
*財政赤字を増大させる。

このうち、不法移民は対象にしない、というのははっきりしていますし、高齢者で社会に貢献できないと見られる人には対象となる治療が限られるのではないか、ということについては、番組のなかでの議論で否定されていましたが、財政赤字を増やさないかどうか、これは微妙でした。財源をどこから持ってくるのか。

オバマ大統領は、自分の計画は10年間で9000億ドルかかる、これはイラクやアフガニスタンでの戦費よりも少ない金額だとしていましたが、アメリカ全体で健康保険にすでにはいっているのは所得の高い人たちで、はいっていない所得の低い半分くらいの人たちをどう保険にはいるようにするのか、ここがまさに問題。議論をききながら、本当に大変なことだと痛感しました。

この日のニュースでいちばん訳しにくかったのは実は次のニュースでした。

You may know the expression.
'Old pilots never die, they just go to a higher plane.'

You're about to meet an old Royal Air Force pilot, who took the term 'saving the day' to a new plane.

plane という単語のことば遊びのようなキャスターのリポート前の解説です。
ニュースの中身は、イギリスのエアショウでずっと飛ばしたことのなかった古い飛行機をただ、滑走させるだけの予定だったのが、勢いがついて飛行してしまったのを操縦していたかつてイギリス空軍パイロットだった男性が、機転をきかせてうまく、着地させ結果としてこのハプニングがあっても誰も怪我もせず無事だったというものでした。

冒頭の文章は「老兵は死なず、去り行くのみ」の掛詞ですし、saving the dayというイディオムに新たな次元をあたえた、というところをplane 飛行機とかけています。こんなニュアンスを訳出では出せませんが。

そういえば、昔アメリカンスクールの数学の先生が言ったジョークを思い出しました。

I will prove how a straight line is a lazy dog.

という、数学の証明をするときの考え方を簡単に説明するジョークです。

まず、手にペンをもって白い紙に直線を書く。
次のセリフ。

This is an ink-lined plane.

発音が同じなのを利用します。

An inclined plane is a slope-up.

またまた、同じ発音の別の単語におきかえ。

そして結論。

And a slow pup, is a lazy dog.

というものです。

いかがでしょう。
皆さんお分かりでしょう。

しかし、これは思い出してみても通訳不能です。

2009年09月17日

レーラー・ニュースアワー

今日2番を担当したレーラー・ニュースアワーでは、たいへん考えさせられる話題がとりあげられていました。この番組のいつものスタイルで、大きなニュースの話題についての座談会があったのですが、座談会のひとつはカーター元大統領のこの発言に基づいて行われました。

An overwhelming portion of the intesnely demonstrated animosity toward President barack Obama is based on the fact that he is a black man, that he's African-American.

ここでカーター元大統領が念頭においていたのは、医療保険制度改革についての大統領の議会演説でウィルソン議員が you lieとやじを飛ばしたことが念頭にあったことは確かです。

座談会の出席者は次の4人。

民主党の世論調査員のベル茶ーさん、Reason というリべりタリアンな雑誌の編集長、ウェルチ氏、マンハッタン研究所の上級研究員マクウォーター氏、それにプリンストン大学のアフリカ系アメリカ人の研究者レースウェル教授です。

私はベルチャー氏とマクウォーター氏を担当したのですが、意見が対照的でした。

Tea party とよばれる抗議集会が夏の間、オバマ政権に反対するものとして(ボストン茶会事件に似せたもので、ティーバッグとかお茶にちなんだものを持ってくる、というところが面白いですが)組織されたというのは、一部の人の間での人種差別感情を示しているのでは、ときかれた世論調査担当者、ベルチャー氏は「mosquito のようなもので、差別感情は消えることはないが、そんなに大きな問題ではい」とアフリカ系アメリカ人にもかかわらず、意外に冷静な対応。

また、シンクタンク研究員で白人のマクウォーター氏も差別があるけど受け入れられる程度であるとの意見でした。

しかし、意見を表明する中でなかなかcolorful な表現を使っています。
いくつか、ベルチャーさん、またマクウォーターさんの表現で面白かったものをとりあげます。

ベルチャーさん

Now, I'm not saying they're causal, but they certainly share a similar space, where you find those voters with the furthest right sort of ideological bent are also those with the highest percentage of racial-adverse attitudes.

はっきりと因果関係にあるとは言わずに、右派の考え方の有権者と人種差別的な態度を取る人たちは重なり合う場合がある、という言い方をしています。

share a similar space

という表現が面白いと思いました。

マクウォーターさん

It seems to me we outlawed legalized discrimination and segregation, and socially we have proscribed open bigotry, and so it's practically equivalent to pedophilia, and that is fine.

公的に、法律的には差別は撤廃されているので、pedophilia と社会的には並ぶもの、という意見。

もう一つ。再びベルチャーさん。女性差別と人種差別についての司会者コメント、 しかも他の人の意見としてもし、オバマではなくて白人のたとえばジョン・エドワーズが大統領だったらこんなやじはなかったのでは、という質問への答え。

I don't think that it would be as passionate, but would Hillary Clionton or a woman, you know, have to deal with the same- with stereotypes having to do with gender? Absolutely, it's part of the American society.

part of the American society
まだ、ステレオタイプに根ざした差別はアメリカ社会の一部、と認めています。

マクウォーターさん。

I just think that, really, it's like saying there are mosquitoes. Yes, there always will be.

But I think there are just bigger fish to fry.

差別意識は蚊とおなじようなもので、なくなりはしない、というのは興味深い意見でしたし、この言い回し

bigger fish to fry

もっと考えるべき大事な問題がある

のを例えた表現も面白かったです。

2009年09月23日

オバマ国連演説

シルバーウィークと言われた5連休の最終日、オバマ大統領の国連一般討論演説の仕事が入りました。夜9時に集合、本番は11時10分から。

パートナーと一緒にまずは待機。最初の5分は、日本時間10時からすでに入ってくる国連のパン・ギムン事務総長の演説からとったものを放送して、そのあと、オバマ大統領が国連演説に入り次第、ノーカットで放送するというものでした。

まず、事前に調べられることとして前日に気候変動について行ったスピーチを調べたり、パン・ギムン事務総長の前年の演説などをネットで調べておくことからスタート。出てくるであろう単語を書き出して、お守りのように単語リストをつくって握り締めているところは普段とおなじ。

ただ、今回は大きな不安要因が一つありました。大体、時間になってもピッタリにははじまりません。パン・ギムン事務総長の演説も予定を10分以上遅れてスタート。ちょっと面白かったのは、前日の気候変動の会合では英語で話していたというエジプト人議長が、今日は何の遠慮もなくアラビア語で話していたことです。
残念ながら、私たちの耳には英語への同時通訳回線は伝わってこないため、何を言っているのか、この部分は意味不明。

しかも、このあと驚くことがありました。パン・ギムン事務総長の演説の冒頭はなんと、、、

Mesdames, messieurs...

と、フランス語。しばらくフランス語の話が続いたところで今度は英語に。

と思って安心していたら、またそのあとスーダンやダルフールについて触れたあたりがフランス語になり、最後はまた英語になりました。

これはフランス語では(なんとなくは分かりますが)仕事になりませんから当然、英語部分の5分程度を、パートナーと二人で分けて用意にはいりました。

そこまではよかったのですが、事務総長のあとに演説をはじめたブラジルのルーラ大統領の話がなかなか、終わらない。しかも、オバマ大統領のほうは鳩山総理とウォルドーフ・アストリアホテルで日米首脳会談を日本時間10時から行っていて、早くても国連到着は11時10分前くらいだろうということ。演説の時間は20分程度ときいていたので、この予定どおりにいけば、オバマ国連演説を伝える特別番組が開始する11時10分までに、一回全体を聞くことができるのですが、どうなることやら。

淡い期待をよそに、すでにブースにはいってスタンバイをしていても、11時を過ぎてなお、終わる気配なし。ようやく11時5分をまわったところで、ルーラ大統領が終わりオバマ大統領が登場!しかし、すぐには話し始めない。順番が先発に決まっていたので、少しでも聴けたらいいのに、、、といらいらしながら待つ私。

しかたなく、最初の2分程度を聴いたところで、パンギムン事務総長の演説で用意してあったところに突入。ここからが大変でした。

オバマ演説、えんえんと終わるところを知らず。
5分交代でやっていて、20分という予定どおりであったら、2回ずつ交代すれば終わるはずが結局、番組の終了予定時間の12時近くになってようやく終わりました。

あと終わりまで10分足らずになったところで、ようやくホワイトハウスのサイトに原稿がアップされたので、ディレクターの方が届けてくださったのですが、練りに練ったスピーチの言葉、目で追うと返って情報が入ってきにくくなる感じもして、どうやってもうまくいかず。

悪戦苦闘の連続でした。あとで録音を聞くのが恐ろしい。

さらにこの特別番組では、最後の解説があと2分ではできないため、予定を5分延長して対応したのに、最後になってニューヨークとの衛星回線が一時中断したりして、臨場感たっぷりでした。

終わってからタクシーに乗るまでの間、パートナーとしみじみ、語り合いました。

最近のオバマ演説、ますます進化して言い回しが難しい。
例えば、とパートナーは前日の気候変動演説から次の箇所をあげました。
ちょっと検討してみましょう。

But I'm here today to say that difficulty is no excuse for complacency.
Unease is no excuse for inaction.

この二つの文章、聞いたところで意味が分かる感じはしますが、日本語に訳そうとすると一筋縄ではいかない、という典型のような例です。

試訳です。

「今日は、課題が困難を極めるのは現状逃避の言い訳にならないと言いたくて来ました。」

「不安だからといって、行動に踏み切るのを躊躇してはなりません。」

次がさらに難しいです。

そういえば、前にもこれに似たフレーズが別の演説でありました。
もしかして、誰か特定のスピーチライターのお気に入りのフレーズなのかもしれません。


And we must not allow the perfect to become the enemy of progress.

「完璧を期そうとして、前に進むのをを押しとどめてはならないのです。」


さて、上記の文章は本当に難しく正直にいうと「大和言葉」で訳したほうが耳で聴いて分かりやすいのですが、おそらく新聞のような活字メディアでしたら次のようにすると思います。

「完璧を期するあまり前進を阻んではならない。」

以上、我ながら考えても考えても、これで完璧といえることはないのですが、それこそ、「完璧を期すあまり一言も発しない」では仕事にならないので、次善の策を講じるしかない、と自らに言い聞かせながら毎日、仕事をしています。

パートナーと帰り際、「今日もよく仕事したね」「悪条件のなか、よく頑張ったね」とお互い、慰めあい励ましあいながら帰路についたのでした。

そうそう、帰路ならぬ岐路で、有名な野球選手ヨーギ・ベーラの次の格言を思い出しました。

When you come to a fork in the road, take it.

「分かれ道(岐路)に到達したら、どちらかを選びなさい。」

ということですが、これって結局こういうことでしょうか。

「決断を迫られた場合には、思い切りが必要」

あるいは

「進む方向に迷うことがあっても、毅然とした決断が必要」

通訳とは常に決断を迫られているといってもいいかもしれません。

知識集約型情報処理サービス業としては、常に自分の発している訳出は「一面の切り取った真実」でしかない、とは思いながらも、ベストを尽くそうとやっているのです。

2009年09月26日

G20後のオバマ演説

今度は、ピッツバーグでの金融サミット終了後の記者会見冒頭でのオバマ演説を通訳するために、NHKに行ってきました。

朝6時のニュースに出るはずでしたが、例によって始まるのが遅く7時のニュースにかろうじて、少しとりあげられたのにとどまりましたが、実はこんなことがあったのです。

ピッツバーグのPamela's Diner はご存知でしょうか。オバマ大統領は選挙期間中にここを訪れてとても気に入ったそうなのですが、私は知らなかったのですが、、、

オバマ記者会見の演説出だし、何を語るとおもいきや、、、

「ピッツバーグで残念に思っていることがある」、
「Pamela's Diner のパンケーキを食べられなかった」
「鳩山首相は食べたそうだがどうやったのだろう?」
「絶賛していた」

というのです。

冒頭で日本の総理大臣の名前を出すのは、おおいに親密さをアピールしたかったのでしょう。

ホワイトハウスのサイトで、speeches のところで、全文をみることができます。

そういえば通訳について、面白い話題があります。

かつて、通訳をさせていただいたことのある、アメリカ在住の知人からの話題提供です。

*********

TVで途中見ていたのですが、カダフィ大佐が、国連演説で、15分の持ち時間を無視し、1時間半も勝手にしゃべり続けたそうですね。

言いたい放題で、聞いているほうは、途中で疲れ果てて、寝ていた人たちもいたようです。見ている方はとても面白かったですが、あとでニュースを見て知ったのですが、75分の時点で、同時通訳がついにショートしてしまったそうで、「I just can't take it anymore!」(日本語だと、「もうやってらんねー!」ということでしょうか、)と叫んだあと、ぶっ倒れたそうです。とってもクレージーな内容の話で、話の展開が全く予想つかない状態で、75分も連続して一人でやっていたというのは、鶴田さんとご一緒に仕事をした経験からも、信じられませんね。

*********

早速ニューヨークポスト紙のサイトをみようとしましたら、そのサイトは存在しない、というメッセージが出ました。

ですが、日本語でも検索してみたら同じ話がでていて、その後日談として、国連のアラビア語通訳者が最後の20分を通訳、とありました。

通訳がその場で崩れ落ちたのは25年の国連での自分の通訳の歴史としても初めて、と目撃した通訳者は語っていたそうです。

これほど、通訳業務は激務です。しかし、自分の経験から考えても国連演説は5分で交代しながら訳していましたから75分を一人でやったということ自体が信じられないです。

そうそう、そういえばちょっと古いですが新聞をみていて面白い、と思った話題が一つありました。

9月23日の産経新聞に、イギリスの92歳の歌手、ベラ・リンさんがヒットチャート首位の最高齢歌手となった、という記事が出ていました。

以前にこの日誌でも、ヒットチャート20位に入った、というBBCでの報道をお伝えしましたが、ついに首位。アフガンでの戦況悪化にも影響を受けているらしいですが、励まされる話です。ここまで息が長い活動ができるというのは羨ま
しい限りです。それもこれも、元気で現役を長く続ける健康があればの話ですね。

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