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CBSイブニングニュース

生の同時通訳で難しいことの一つは、語順の違いによっては訳出するにあたって
の情報処理のスピードが追いつかないこと。あとで考えてみたらこういうことを
言いたいのだ、とわかっても、頭から聞いて順送りに情報を処理していると、内
容を理解しないうちに何とか訳出だけやろうと必死になるあまり、ことばは出て
いるけれども意味がわからない訳になってしまうことがある。

今日出てきた話題。ある程度予想がついていたが、オバマ大統領がヒスパニック
系として初めてソトマイヨール判事を最高裁判事指名に当たり、共和党側からの
反発があって、以前に判事が発言した内容が人種差別的だと批判をされた。

その発言の内容。

“I would hope that a wise Latina woman with the richness of her experiences would more often than not reach a better conclusion than a white male who hasn’t lived that life,” said Judge Sotomayor, who is now considered to be near the top of President Obama’s list of potential Supreme Court nominees.

順送りに情報を出そうとするとこんなふうになるでしょう。

願わくば、賢明なヒスパニック系の女性は豊富な経験をもってこうなることが多
いように望みたいです。より良い結論に達することを望みます。白人の男性でこ
んな人生経験をしたことがない人よりも、より良い結論に達することを望みます。

あとから、私が言うところの「ポストイット方式」で情報(この場合は「望みま
す」という動詞)をぺたんともう一度、二度と繰り返し貼り付けながら訳したと
しても、肝心の情報が何なのかぴんとくるように伝わりません。

肝心の情報は、「白人男性で人生経験が少ない人よりも、賢明な豊かな人生経験
のあるヒスパニック系の女性のほうが、よりよい結論に達することが出来る」と
ソトマイヨール判事は考えているということなので、I would hope はむしろ、
訳さないほうが意味がはっきりするくらいです。

more often than notの処理も、冒頭でやろうとすると、混乱のもとです。両方
とも、発言の衝撃を和らげるためにつけているようなものです。

しかしこの日、同時通訳でこれがでてきたときにまさに足をすくわれたのは、こ
の部分、more often than not でした。

考えている内容は何か、理解をするためには I would hope も more often
than not も両方ともとって考えたほうがいいくらいです。日本語で同じ内容を
発言しようとしたら、おそらく次のようになるでしょう。

「白人男性で人生経験が少ない人よりも、賢明な豊かな人生経験があるヒスパニッ
ク系の女性のほうがよりよい結論に達することができる場合が多いことを、私は
望んでいます。」

たまたま、冒頭にきているためにこの長い文章を全部聞いてから訳出することが
待てないとすれば、細切れ訳出にしてわけがわからないことをいうよりは、肝心
なことだけでも出す、というふうに考えたほうがよいでしょう。

あるいは more often than not がこのような形で出てきたときに、どうすれば
うまくいくのかを研究しておいて、次に使ってみようということもあるとは思い
ます。

こういう技術的なこともありますが、どういうコンテキストでソトマイヨール判
事がこう発言したのか、わかっていればもう少しはやりやすかったでしょう。

改めて調べてみましたら、上記のニュースの発言部分には次のような事情があっ
たことがわかりました。
こちらのサイトにあがっているニューヨークタイムズの記事です。

In 2001, Sonia Sotomayor, an appeals court judge, gave a speech declaring that the ethnicity and sex of a judge “may and will make a difference in our judging.”

In her speech, Judge Sotomayor questioned the famous notion ? often invoked by Justice Ruth Bader Ginsburg and her retired Supreme Court colleague, Sandra Day O’Connor ? that a wise old man and a wise old woman would reach the same conclusion when deciding cases.

最高裁の女性判事二人、現役のルース・ギンツバーグ判事とすでに引退したサン
ドラ・オコナー判事は二人とも擁護している賢明な年齢を重ねた男性、女性であ
ればともに同じ結論に達するだろうという考えに反対する立場を述べた発言だっ
たのです。

しかし、ニュースではこのコンテキストなくして2001年に人種差別的な発言をし
た、ということだけがとりあげられていることも、訳しにくさを増幅した一つの
原因でしょう。

先日、オバマ大統領が毎年恒例であるホワイトハウスでの記者団を招いての夕食
会でジョークを連発したという記事をとりあげたときに、学部の時事英語ではな
かなか理解できないジョークがあった、という声があがりましたが、背景知識が
ないとなかなか、どうしてそれが面白いか、それが問題になるのかというところ
が把握できません。

現実に放送通訳をしていてもまったく同じことです。
毎日が勉強です。
技術を磨くこと、そして知識をつけること、両方共に必要なのです。

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2009年05月28日 22:17に投稿されたエントリーのページです。

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