« 2018年8月 | メイン | 2018年10月 »

2018年9月 アーカイブ

2018年9月26日

末原拓馬「夢語」

末原拓馬「夢語〜ゆめご〜」

おととい、月祝に観てきましたよ。
吉祥寺Star Pine's Cafeで。

もー、どんどんディープになってるね。

まあ、夢の中で使われる夢語(dreamish)っていうのがあって、
それは、万国共通で、夢の中に出てくる、と。

それだけではなく、バベルの塔で、言語が撹乱される以前は、
皆同じ、その言葉で喋っていたかも知れない、と。

それは、エデン語と呼ばれたり、ヘブライ語と呼ばれたり。

(ヘブライ語説は、(聖書)ヘブライ語が、アフロ・アジア語族、
セム語派の中で、かなり革新的な特徴も持っているので、
それが世界の全言語のもといであるとかいう、
19世紀辺りの言語学者の一部が言っていた説には
言語学徒としての僕は乗れませんが。)

その夢語、dreamishを拓馬なりに構築して
披露する場面もありました。それはまた後ほど。

「恋愛」

恋愛対象が、今まで、だんだん人から、妖怪から、
動物から、無生物から、霊から、幻影にまで、どんどんと
人から離れて行っていたと見受けられたのですが、
今回は、人と人の恋愛だったな、と。

それも女と男の恋愛だった。めずらしい!<笑>

「ディープな世界」
宗教チックな、ニューエイジチックな話、好きだよねー。

まあ、今回は、夢縛りがあったので、あまりあらぬ方向には
行きませんでしたが。

でも、夢枕に建った故人の言うことは
夢語なので、生きている人にはわからないというのは
新しかったかも。

「夢語の創作・試作」
細かいことはもちろんわからないのですが。

末原は、創作というよりは、既存であるはずの
夢語にできるだけ接近しようとしているのでしょうが。

でもまあ、人工言語(conlang)の類いではあるのかな、と。

「言語」としてそれなりに実用にまで至った人工言語は
エスペラントぐらいですかね。

文学などの芸術の中で作られたものは、トールキンの創作のなかでの
諸言語とか、スタートレックの中で出てくるKlingon語とか。
(Klingonは言語学徒が創作したんですけどね。)

若い言語学徒、トルミス・ナーノ君は、実用言語を目指すものでなく、
ご自身制作の映画などの創作芸術の中で使われる言語としての
人工言語として、言語創作をしている。

もとい、末原の夢語が、どのようなスペックを持った
ものなのかは、全く、分析できていません。

只、音論、音素配列音は英語に近く、しかし
英語ではゆるされない事例もあった。
([ts]が語頭にきたり、意味を担いそうな声門破裂音[ʔ]があったり。)
でも詳細は不明です。形態論、統語論に至っては
まったくのお手上げです。

閑話休題。NITORONというバンドがあって、
南洋風な創作言語で歌ってらっしゃるんですが、
こちらの音論、音素配列音は、日本語そのままなので、
素人が「すげー!」ってなるほどには、
音声学徒はおどろかないのです。

もとい、末原の夢語は、まだこれから色々と
肉付けされて、形がしっかりしてくるものなのかも
知れませんし、楽しみです。

「ストーリー」
は、短編を散りばめたものだったのですが、
なんとなく、お互いがつながっていて、
全体的には、まとまった1つのお話になっている
というものでした。

で、演じてるときなのですが、
もちろん、(本を書く人という面は置いておいて)
演者としては俳優として演じているんでしょうけど、
部分的に、登場人物2人の会話の場面が
ちょっと落語落語していました。

もちろん、座布団の上に、末原たじっとしている
わけもなく、動き回るので、落語じゃないんですけど。

「結語」
とはいえ、一人の「本書き」という枠からも、
一人の「俳優」という枠からも、
はみ出しまくりで、その時、その場でしか観られない
パフォーマンスを観れたのだなあ、と。
そのひとときが幸せでした。

About 2018年9月

2018年9月にブログ「タナナことば研究室」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2018年8月です。

次のアーカイブは2018年10月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。