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2015年7月 アーカイブ

2015年7月 6日

コンツェルト新人公演

ロシア語劇団「コンツェルト」が新人公演をおこなう。
今回はまったく性格の違う2つの演目を、それぞれの演出家が別々の演出でお届けするという。1回で2つ分楽しめる! ぜひ見にきてください。

外大公演: 7月17日(金)大学会館大集会室
早稲田公演: 7月24日(金)大隈講堂小講堂

両日とも開場18:15 開演18:30 (終演予定19:15)

『欲張りな高官』
原作: ロシア民話
キャスト: 河村拓馬 上野裕史 岩見真依 小川祥子 笹原秋
演出: 酒井優樹
演出助手: 児玉千明
字幕: 古里奈穂子
お話: あるとき王様が指輪をなくしてしまい、見つけた者に褒美を取らせるとおふれを出した。指輪を見つけた一介の兵士が王様に届けようとすると、欲張りな高官が立ちはだかって...。

『タバコの害について』
原作: チェーホフ
キャスト: 西川裕起 松原理佐 中島蓮 横山綾香
演出: 工藤真唯
字幕: 三好玲実
小道具: 安井遥
お話: 音楽学校を経営する妻に命じられるまま「タバコの害」について講演を始めた男。ところが脱線を重ねて、口にするのは愚痴ばかり?

2015年7月11日

山崎佳代子さんのワークショップ


来る7月17日(金)13:00より本学で、詩人でベオグラード大学教授の山崎佳代子さんの詩のワークショップ「詩歌(ことばうた)ワークショップ・天使たち」 が予定されている。セルビア語と日本語による詩の朗読が楽しめる。
山崎さんの朗読・パフォーマンスはなにしろ素晴らしいので、とても楽しみ。

いま編集作業が着々と進んでいる世界料理の本 『世界を食べよう!』 (東京外国語大学出版会、2015年9月刊行予定)にも山崎さんは素敵な原稿を寄せてくださった。
こちらも乞うご期待。 

2015年7月13日

リューシャとヴォーヴァ

リューシャ(リュドミラの愛称)・ウリツカヤのお話とヴォーヴァ(ウラジーミルの愛称)・リュバロフの絵が絶妙のコンビネーションを見せている大人の絵本 『子供時代』 (新潮社、2015)について、月刊読書情報誌 『波』(2015年7月号)に作家の梨木果歩さんが素晴らしい書評を書いてくださった。

タイトルは、「リューシャとヴォーヴァがここにいた」
ちなみにこれは、本の裏表紙を飾るリュバロフの絵に塀が描かれていてそこに「リューシャとヴォーヴァがここにいた」という落書きがあるのだが、それにのっとったお洒落なタイトル。
梨木さんは、この書評の中で、「本人の五感と脈打つ世界との間に遮る何ものもない、一方的にやってくる世界の鼓動をそのまま無防備に全身で受け止めざるを得ない辛さと、新鮮なまま感受する謙虚さ――それらを支え、持ち堪えさせたのは、スターリン時代の暗い抑圧の中にあっても消し去ることの出来なかった、光溢れる生命の力の、強靭さそのものではなかったか」と記している。
そうなのだ。背景にスターリン時代の1949年があるのだ。それなのに子供時代はこんなにも愛おしくたくましく、そして神秘的だったのである。

梨木さんの書評の全文はこちらで読める。
 ↓
http://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2015/07/201507_10.php


また、詩人の日和総子さんは『読売新聞』(2015年7月5日)で、「懐かしく瑞瑞しい子供時代」と題してこの本を取りあげてくださり、「1949年のモスクワらしき町に暮らす子供たちの日常を、著者は過度の感傷や郷愁や悲愴感などを交えず見つめ、そこに訪れる仄かに光り輝くひとときを、淡淡とした濃やかな筆致で描き出す」と評してくださった。

ちなみに、シュールなものもあり、リアルなものもあり、ユーモアとアイロニーを備えた独特の作品世界を持つウラジーミル・リュバロフは、こんな本を出している。彼自身が自伝的なお話と絵で綴ったアルバムだ。

ウラジーミル・リュバロフ 『物語、絵』 (モスクワ、GTO社、2011)

2015年7月14日

いざ、大学院へ!

来る7月25日(土)東京外国語大学 大学院(総合国際学研究科)進学説明会をおこなう。
時間: 12:00-16:00
場所: 115教室

2016年度より本学 大学院は、より充実した内実を目指して改編される。
大きく ①「世界言語社会専攻」と ②「国際日本専攻」に分かれ、①がさらに言語文化コース、国際社会コース、Peace and Conflict Studiesコースの3コースになる。
詳しくは、ぜひ25日に聞きに来てください。先輩院生との相談もできます。

さあ、いざ、大学院へ! 一緒に研究しませんか?

2015年7月22日

クルコフの新刊 『ウクライナ日記』


ウクライナのロシア語作家 アンドレイ・クルコフの新刊 『ウクライナ日記―国民的作家が綴った祖国激動の155日』(吉岡ゆき訳、ホーム社発行、集英社発売、2015年)がもうほんの数日すると発売開始となる。

2013年、当時のウクライナ大統領ヤヌコヴィッチがEUとの経済連携協定を見送り、それに怒った市民たちのデモが発生する。
最初にデモが起こったのがキエフの中心にある独立広場。ウクライナ語で広場を「マイダン」ということから「マイダン革命」と呼ばれるようになる。
クルコフはこのマイダンのすぐそばに住んでいて、マイダン革命の様子をつぶさに日記に記していた。だから原題は 『マイダン日記』だ。
日本語版には、池上彰氏の解説「ウクライナ情勢入門」が付されている。

アンドレイ・クルコフは不思議な魅力を持つ国際的ベストセラー 『ペンギンの憂鬱』 の作者である。
じつはこの8月(もうすぐ!)、クルコフが初来日する。日本でのクルコフ関連のイベントは次のとおり。

8月7日(金)18:30-20:00 神田外語大学(千葉幕張)4号館101教室 (無料)
ICCEES(国際中欧・東欧研究協議会)第9回世界大会特別企画の国際シンポジウム 「スラヴ文学は国境を越えて―ロシア・ウクライナ・ヨーロッパと日本」

8月8日(土)12:00-14:00 本屋B&B(世田谷区北沢)1500円
アンドレイ・クルコフ×亀山郁夫 対談 「マイダン革命、ウクライナ危機とロシア文学―新刊『ウクライナ日記』と、ロングセラー『ペンギンの憂鬱』をめぐって」

2015年7月23日

国際シンポジウム 「スラヴ文学は国境を越えて」



国際中欧・東欧研究協議会(ICCEES) 第9回 世界大会 記念特別企画として、国際シンポジウム 「スラヴ文学は国境を越えて―ロシア・ウクライナ・ヨーロッパと日本」を行う。

日時: 2015年8月7日(金)18時30分~20時 (会場18時)
場所: 神田外語大学(千葉市幕張)4号館101番教室

国境なきスラヴ文学団からの世界へのメッセージ
<大砲がうなりをあげる時でも、ミューズは沈黙しない>

パネリスト
アンドレイ・クルコフ(ウクライナ)
ミハイル・シーシキン(ロシア/スイス)
ドゥブラフカ・ウグレシッチ(クロアチア/オランダ)

討論者:多和田葉子(ドイツ/日本)
司会:沼野恭子

国際紛争が激化し、ナショナリズムに煽られて民族間の憎しみが増幅していく現代世界にあって、文学はどのような役割を果たすことができるのか。スラヴ作家たちは世界にどんな平和のメッセージを伝えることができるのか(あるいは、できないのか)。暑い夏の夜、幕張に集い、政治上の対立や国家の境界を超えて語り合う。

*使用言語:ロシア語、英語、日本語。逐次通訳つき。
*一般公開。入場無料、予約不要。どなたでも聴講できます。ただし座席は大会公式参加者用200名、一般市民200名。満席の場合は立ち見をお願いする場合もありますので、あらかじめご了解ください。

2015年7月26日

日本学術会議声明を支持する

2015年6月8日、文部科学省が国立大学のとくに人文社会科学系学部・大学院に対して、「組織の廃止」を含む「見直し」を求めた。
これに対して、7月23日、日本学術会議が幹事会声明を発表して反論・批判を展開している。
私も、今回の文科省の通知は近視眼的、実用主義偏重であり、日本の人文社会科学の重要性を軽視、無視するものであり、ひいては将来的に日本の研究・教育の全般的レベルを引き下げるものであると考えており、方向性そのものに強い違和感と危機感を抱いている。
以下に、日本学術会議幹事会声明を引用しつつ支持を表明したい。

「声明」はまず、人が目指すべき「総合的な知」というのは「自然科学」と「人文・社会科学」の連携によって初めて形成されるものであるとして、「人文・社会科学のみをことさら取り出して『組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換』を求めることには大きな疑問がある」としている――然り、自然科学(つまり理系)と人文社会科学(つまり文系)は互いに補完しあい協力しあってこそ、知の密度が高められるのではないのか。

また「目には見えにくくても、長期的な視野に立って知を継承し、多様性を支え、創造性の基盤を養うという役割を果たすこと」も大学に求められている社会的要請であるとしている――然り、目先の目標や計量化になじまない分野をないがしろにしては絶対にいけない。

最も共感を覚えるのは「グローバル人材」の定義だ。「グローバル人材」とは、単に国際的なビジネスの競争に勝てる人材というのではなく、「人類の多様な文化や歴史を踏まえ、宗教や民族の違いなど文化的多様性を尊重しつつ、広く世界の人びとと交わり貢献することができるような人材でなければならない」という――然り、日本を、教養や洞察力のないロボットのような企業戦士ばかりの国にしてはいけない。「人文・社会科学の軽視は、大学教育全体を底の浅いものにしかねない」。

全文はこちらで読める。
 ↓
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-kanji-1.pdf

2015年6月29日付 『日本経済新聞』 に掲載された一橋大学元学長の石弘光氏の記事には、理系と文系の「成果」の評価をめぐり、単純な数値に置き換えて両分野を比較することの無意味さがわかりやすい比喩で示され、痛烈に批判されている。

「つまり多量に論文を作成・公表しうる自然科学とまったく反対の人文社会科学とで、同じように論文数、論文被引用数を基準として研究成果は評価されている。これではバスケットボール(毎試合100点近い得点)とサッカー(僅かな得点)をそのまま得点で比較しているようなものだ」。

石弘光氏は、「経済界も要望する『社会に役に立つ』という視点のみから大学改革が行われようとしている」として「政府の介入の度合いが一段と強まってきた」ことに警鐘を鳴らしている。まったく同感である。

2015年7月29日

ICCEES (イクシーズ) カウントダウン始まる!

大規模学会である 「国際中欧・東欧研究協議会 International Council for Central and East European Studies」 略して 「ICCEES(イクシーズ)」 の第9回幕張世界大会がいよいよ間近に迫り、カウントダウンが始まった。

開幕まであと5日!

この大会は、旧ソ連・中欧・東欧を研究対象とする地域研究のオリンピックのようなもので、5年に1度開催される。今回はアジアで初めて開かれる記念すべき大会である。
私たち組織委員会+事務局は、8月3日から8日までの間、世界中からやってくる研究者を迎えてもてなし、自らも発表をおこなって研究成果を世に発信し、世界のスラヴ研究の発展に貢献するべく全力を尽くす。それにより、人文社会科学の存在意義と重要性を訴えたい。

詳細はこちら。
 ↓
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/makuhari2015/

準備は着々と進んでいる。
大会のプログラム(左)とメモパッド(右)がお揃い。
グラフィックデザイナーの加藤賢策さんによる素敵なデザイン。どことなくロシア・アヴァンギャルド風?
 ↓

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