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ウズべキスタン出張

中央アジアのウズベキスタンにアヴァンギャルド研究調査のため出張した。

タシケントでは、国立ウズベキスタン美術館で、シルク、チュベイカ(頭にかぶる中央アジア独自の帽子)、絨毯、レリーフ、彫刻、絵画などを見る。2弦の民族弦楽器ドゥタールや打楽器ドイラ、布に模様を刻む「スタンプ」なども展示してあり面白かった。
絵画のコレクションも充実していて、アレクサンドル・ヴォルコフの作品が10点ほどあり、赤やオレンジが美しい。
全体を見て、ザクロを描いている作品が多いことに気づく。

次にウラル・タンシクバエフ(1904-1974)記念館へ。タシケント生まれで、カザフ系だがウズベキスタンの誇る画家だ。
タンシクバエフが生前使っていた家具や身の回りの品々がそのまま保存され展示されている。1920-30年代は前衛的な画風だったが、のち具象的な風景画に転じた(転じざるを得なかった)。



なんとこの日(3月17日)、小松久男先生、島田志津夫先生、前田和泉先生、留学している学生3人、私の計7名も本学の関係者がタシケントに揃ったので、小松先生お勧めの「ベク」というレストランに大集合!
コズィという馬肉ソーセージ、キュウリとトマトのサラダ、マスタヴァというスープ、シャシリク、ウズベク産ワインで楽しいひと時を過ごした。
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タシケントから飛行機で2時間ほど(かかる時間は飛行機によって異なる!)、出張の最重要目的地であるヌクスのサヴィツキー美術館へ。
イーゴリ・サヴィツキー(1915-1984)はキエフ生まれで、もともとは画家だったが、カラカルパキア地方の発掘調査をした民俗学研究者でもあり、1920-30 年代のアヴァンギャルド美術を収集し始め、稀代のコレクターとして名を残すことになった。1966年ヌクスにこの美術館がオープンしてから亡くなるまで館長を務め、ウズベク美術の発展にも多大な貢献をする。世界の美術史に極めてユニークな足跡を残した人である。
館内は、カラカルパキアの民芸品・生活用品、旧ソ連時代の絵画など所狭しと展示してあるが、全部で約10万点所蔵しているうちの3%しか展示できていないとか。現在、新館がオープンの準備を進めている。



ここで、マリニカ・ババナザロフ館長に前田さんとふたりでインタビューする(約2時間も付きあってくださった)。
ミュージアム・ショップでは貴重なアルバムや資料、DVDを手に入れた。



 インタビュー風景



  エヴゲーニイ・ルィセンコ



  ヴィクトル・ウフィムツェフ



  アレクサンドル・ヴォルコフ


ヌクスでは「イスチクロフ」(「独立・主権」を意味するウズベク語)というレストランに行く。
夕方と言ってもまだ明るかったのだが、食事が終わりかけたころ突然電気が消えてディスコボールが輝きだし(!)、大音響で音楽が始まったかと思ったら、「女子会」をしていた人たちが踊り出した。
しばらくすると、何度も誘われるので断るわけにもいかず、ウズベク風ともインターナショナルとも言い難いダンスで腹ごなしすることになる。
その後の記念撮影がこちら(まるで旧友であるかのように馴染んでしまった...)。 
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ふたたびタシケントに戻り、アフマートワ記念館を訪れる。
この記念館は高級住宅街にあるロシア文化センターの一角(地下)。アリビナ・マルケヴィチ館長(もうすぐ85歳!)が迎えてくれ、詩人アンナ・アフマートワとタシケントとの関わり、記念館ができるまでのいきさつ、なにげなく展示してある本や写真についていろいろ話してくださった。マルケヴィチさんはアフマートワに一度会ったことがあるという。
ロシア詩の専門家である前田さんがタシケントをめぐるアフマートワの詩をロシア語と日本語で朗読して喝采を浴びる。


同席していたジャーナリストのライサ・クラパネイさんが、この訪問をご自分のブログに書いてくださったのがこちら。
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http://krapan-5.livejournal.com/896613.html


今回の出張は、ゼミ生でタシケント国立東洋学大学に留学中の大内悠くんが、行く先の手配からインタビューのお膳立て、移動、案内、写真係まで、文字通り何から何まですべて、痒いところに手が届く完璧なコーディネートをしてくれた。
中央アジアは初めてだったので、タンシクバエフ美術館もアフマートワ記念館も、案内してもらわなかったら行けなかったと思う(何しろ所在地を見つけるだけでも大変なのだ)。ロシア語もウズベク語もわかる大内くんがいてくれて、どんなに心強かったかしれない。
だから正直に言うと、いちばんの目当てだったヌクスのサヴィツキー美術館は想像以上に素晴らしかったし、ウズベキスタンの人々のどことなくのんびりした幸せそうな笑顔にも心打たれたし、ウズベク料理ももちろん美味しかったのだが、この出張の最大の収穫(?)は大内くんのエスコートであった。行動力と気遣いに満ち、頼もしくかつ繊細。
本学に中央アジア地域が新設された年に第1期生として入ってきた大内くん、4月から4年生になりウズベク・アヴァンギャルドをテーマに卒論を書くというから、将来が楽しみだ。本当にご苦労様でした!



 ヌクスのバザールで。乳製品を売っていた女性と大内くん。

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2015年3月22日 17:18に投稿されたエントリーのページです。

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