« アヴァンギャルド研究会 | メイン | ペレーヴィン2作 »

高橋ブランカさんと多言語パフォーマンスのこと

ひょんなことから(ピリニャークのある短編に出てくる日本人作家にモデルはいると思うかという日本語のメールをいただいてから)高橋ブランカさんとメールのやりとりが始まった。
しだいにわかってきたのは、ブランカさんがセルビア出身で、ベオグラード大学日本語学科を卒業したこと(山崎佳代子さんの教え子!)、ウラジオストクに数年住んでいたこと、今は日本でいろいろな創作活動をしているということ。
やがて日本語で書いた小説を見せていただくようになり、今回はパフォーマンスに誘っていただいた。関内の "Archiship Library & Cafe" というお洒落なカフェをユニークな舞台空間に見立てての多言語パフォーマンス 『女の平和』の翻案公演とあって、これは逃す手はないと観に行った。

Multilingual Performance Theater 「空(Utsubo)」による第7回公演 『リューシストラテ』
翻案・演出: 岸本桂子
出演: 高橋ブランカ、山本真理



予想に違わず、じつに面白かった!
白装束の女性ふたりが部屋の反対側に立ち、ときどき場所を交換しては、アリストパネスの 『女の平和』 のモチーフにもとづき、男たちに戦争をやめさせるべく「セックス・ストライキ」をおこなう現代の女たちを演じる。
戦争をする男とは寝ない―それが女に残された平和への方策であり「最後の手段」であることは、昔(古代ギリシャのリューシストラタテ)も今(現代のレイマ・ボウィ)も変わらない。レイマはリベリアでセックス・ストライキを呼びかけるなどして平和運動を展開し2011年にノーベル平和賞を受賞した実在の人物だ。「ドキュメンタリー・パフォーマンス」と銘打たれているのも、むべなるかな。

そこで飛び交うのは、日本語、英語、ロシア語、セルビア語、スペイン語。観客は、一部プロジェクタの助けを借りながら、文字通りマルチリンガルな場を体感することになる。女たちの語りが、英語→日本語、日本語→英語の順で、あるいはロシア語→英語→日本語の順で披露され、はたまたカノンのように少しずれて重ねて語られたり、セルビアの詩人ラドミア・ラジッチの詩がセルビア語→日本語訳で紹介されたり......。その構成・演出が独創的で興味深かった。

高橋ブランカさんはこれらすべての言語を巧みに操り、とても魅力的に演じていた。
帰りに、ブランカさんご自身の書いたロシア語の小説の載った文芸誌をいただく。
彼女のマルチタレントが日本でさらに輝き、大きく花開きますように!



 ブランカさんと和泉さん

About

2015年2月12日 12:22に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「アヴァンギャルド研究会」です。

次の投稿は「ペレーヴィン2作」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。