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時の人

いま私のまわりで話題になっている人と言えば、高橋知伽江さん。
アニメ 『アナと雪の女王』 の主題歌の翻訳を手がけた人で、その訳詩が素晴らしいと大評判になっている。
じつは東京外国語大学ロシア語科の卒業生。私の先輩であるだけでなく、学生時代、同じロシア語劇サークル「コンツェルト」の仲間でもあった。だから私としては「高橋由美子さん」と本名で呼ぶほうがしっくりくる。

高橋さんは学生時代から芝居にとても詳しかった。メイエルホリドを中心に1920年代のロシアアヴァンギャルド演劇について卒論を書かれた。
卒業後は劇団四季で活躍、やがてフリーとなって芝居やミュージカルの翻訳をしたり(小田島雄志翻訳戯曲賞を受賞)自ら戯曲を書いたり。

ロシア関連で言えば、高橋さんはミュージカル『誓いのコイン―ロシア兵をもてなした松山』(2011年)の脚本・作詞を担当している。これは日露戦争のとき捕虜となって松山収容所にいたロシア軍将校とそこに勤めていた日本人看護師の恋愛物語だ。
あるとき、松山城址からロシア帝国の10ルーブル金貨が発見され、そこにふたりの名前が彫られていることが判明した。そのエピソードをもとに高橋さんがミュージカルとして書きおろしたのだという。

公演のパンフレット
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私もかつて松山のロシア人墓地を訪れたことがある。松山の捕虜収容所で命を落とした約100名のロシア人のための墓地が、松山の人たちによって日露戦争のときから今に至るまでずっと大事に守られてきたと聞いて深く感動したことを覚えている。

愛媛県東温市にある「坊っちゃん劇場」は、2012年にこのミュージカルをモスクワとオレンブルクで上演して大好評だったそうだ。

高橋さんは現在、水戸芸術館の演劇部門芸術監督。
子どもミュージカルスクールや落語家のトークショーなど水戸を拠点にさまざまな演劇イベントを仕掛けているらしい。
これからも一層のご活躍を!

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2014年8月 8日 21:19に投稿されたエントリーのページです。

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