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朗読の魅力

8月2日(土)軽井沢の塩沢湖湖畔に立つ「睡鳩荘」で、朗読会「チェーホフ! かわいい!」が行われた。睡鳩荘は旧朝吹邸で、趣のある素敵な洋館である。
長い間ほとんど定訳となっていたチェーホフの「可愛い女」を「かわいい」とした新訳(『チェーホフ短編集』沼野充義訳、集英社、2010)に短篇をいくつか添えたプログラムで、軽井沢演劇部(矢代朝子さん他)による上演だった。場所がら別荘を舞台にした作品が多く選ばれた。
外で本物の(!)別荘人たちの笑いさざめく声や本物のカモ(カモメではなく)の鳴き声が聞こえるなか、軽やかでユーモラスな情景が次々に浮かび上がる。黙読するだけで理解するのとは違う「演出された」時空間。芝居と黙読の中間に位置する朗読劇の魅力を再確認した。

せっかく湖があるのだから、次回は、睡鳩荘のテラスを舞台に見立ててぜひ 『かもめ』 の朗読会をしてほしい。『かもめ』 にこれほどぴったりの場所はないだろうから。


翌日は、千ヶ滝、白糸の滝とふたつの対照的な滝を見る。
前者は高さが20メートルもある激しくエネルギッシュな滝。後者は、高さこそ3メートルに過ぎないが幅が70メートルほどもあり岩肌から水が湧き出しているエレガントな滝だ。

白糸の滝
 ↓


その後、千住博美術館を訪ねた。
建物からしてコンセプトが素晴らしい。明るい館内にガラス張りのスポットが大小4つあってそこに白樺などの木々が植えられている。
床に傾斜があるのは、軽井沢の土地の勾配そのものを模しているという。
展示されている作品と自然がバランスよく配されているため、木々は背景ではなく控えめながら自らの存在を主張している。
まさにアートと自然の調和した、いつまでもいたくなる気持ちいい空間だった。

そして、「ウォーターフォール」の連作、「デイフォール・ナイトフォール」、地下宮殿の "The Fall"。ウォーターフォールつまり滝。静寂なはずの館内にどこからともなく滝の音が響いてくるような錯覚に陥る。
こうして、この日はすっかり「滝をめぐる冒険」をした気分になったのだった。

ちなみに、対照的なふたつの滝のうち、千住博の描いた滝は千ヶ滝(ああ、名前も頭韻!)の激しさを秘めたほうだった。


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2014年8月 4日 21:40に投稿されたエントリーのページです。

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