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カロリーナ・パヴロワ


19世紀の詩人 カロリーナ・パヴロワ (1807-1893)の作品が翻訳された。
カロリーナ・パヴロワ 『ふたつの生』 田辺佐保子訳(群像社、2014)

モスクワの裕福な貴族の令嬢ツェツィーリヤの昼の生活と夜の幻想の世界をそれぞれ散文と詩で綴るという、いかにもロマン主義的・象徴主義的二元論が展開されている。
「二重の生」である(原作は1848年刊行)。
昼の散文の部分では、社交界の奸計によりあたかも自らの意志で選んだ恋愛のように見えてじつは貴族社会の規範にのっとって仕組まれた結婚をすることになるヒロインが、夜の詩の部分では、意識下の不安や恐れを「貴方」に代弁してもらっている。最後にはこの幻想の詩の2行が現実に口にされるという現実と幻想の混交が見られるが、物語の最後まで現実のツェツィーリヤは自らの漠然とした不安を言語化することができない。
なぜなら、18歳の彼女は「自分の頭にはめられたコルセットにすっかり慣れきってしまっている」からなのだ。
もちろん、ここで「コルセット」というのは当時の「社会規範」のことである。

パヴロワがポーランドの国民詩人アダム・ミツケーヴィチに求婚されていたとは驚いた。
彼女は、ロシア語の他、ドイツ語とフランス語が堪能でロシアの詩をそれらの言語に訳してもいる。

それにしても、現代日本の女性たちもいまだに社会規範にがんじがらめにされており、パヴロワの時代からたいして進歩しているようには見えない。
昨今の「セクハラオヤジヤジ(性差別発言)」の件などその最たるものだろうが、都議会のみならず、日本社会に広く根強くはびこっているように思う。
もういい加減、女性たちにコルセットを押しつけるのはやめるべきだし、女性たちは自分たちの主張をもっと主体的に「言語化」するべきではないだろうか。

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2014年6月28日 23:14に投稿されたエントリーのページです。

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