3月23日(日)渋谷で、アテネ・フランセや国際交流基金主催による映画上映とトーク「ソ連の知られざる雪どけ文化と映画」があり、行ってきた。
ロシア国立中央映画博物館副館長マクシム・パヴロフ氏の来日に合わせた企画である。
まず、彼が選んだミハイル・カリク監督(1927年生れ)の映画『愛する...』が上映された。日本初公開だという。
『愛する...』は、ユーリイ・カザコフなど当時の新進作家4人の短篇を原作とする「愛とは何か」を問うたオムニバス映画で、街頭インタビューと、ロシア正教会の長司祭アレクサンドル・メーニのコメントと、旧約聖書の「雅歌」が要所要所に差し挟まれている。形式的にも内容的にも大変面白かった。
パヴロフ氏のトークは、この作品が制作された1968年、当局によってフィルムが押収され、宗教的な箇所(メーニのコメントと「雅歌」という言葉)がカットされるなどした後、さらに大幅に作りかえられたその経緯についてだった。その後、カリク監督は著作権侵害だとして裁判に訴え、当局は逆にオリジナル作品を自力で上映してまわっていた監督を訴えるというスキャンダルに発展したそうだ。
カリク監督は1971年にイスラエルに亡命。
パヴロフ氏は、カリク監督の運命は雪どけ期の優れた芸術家がたどった典型的・象徴的なものだと語った。
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マクシム・パヴロフ氏と通訳の吉岡ゆきさん