女性誌 『ミセス』 が 「世界で発信する女性たち」 というシリーズを連載しており、最新号の2014年2月号でリュドミラ・ウリツカヤを取り上げている。
ちなみに前回は、ナイジェリアの若手女性作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェだった。
写真:エレーナ・クラスノワ
記事の大部分は編集サイドがモスクワの自宅にウリツカヤを訪ねインタビューしたもの。
中でも彼女の「子供プロジェクト」が大きく扱われているのが嬉しい。これは、子供たちに異文化への理解を深めてもらおうという目的でウリツカヤが立ち上げたプロジェクトで、1冊1冊テーマと書き手+イラストレーターを彼女自身が選んでいる。例えば、服飾に関する巻は専門家のライーサ・キルサーノワ、宇宙の成り立ちについての巻は作家のアナスタシヤ・ゴステワが文章を書いている。どの本もそれぞれに個性的で美しい。
『ミセス』 の今回の特集では私もウリツカヤの活躍について短いコラムを書かせていただいた。その中の一部を以下に引く。
「史実を背景に家族の年代記を語るという手法において、ウリツカヤはレフ・トルストイの後継者ではないかと私はひそかに考えている。もちろん19世紀の貴族社会と20世紀のソ連社会では家族の有りようからしてまるで異なるし、トルストイの保守的な女性観をウリツカヤが共有しているわけでもない。しかし例えば、3人の幼なじみを中心にスターリン後の知識人群像を描いたウリツカヤの『緑の天幕』(2011)は、3人の男女とその家庭を中心に壮大なドラマを展開させたトルストイの『戦争と平和』の「現代版」と言ってもいいような作品ではなかろうか。
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ウリツカヤは作品の中で政治的な主張をするような社会派作家ではないが、2012年の選挙に際しては、不正や欺瞞のない社会を求める市民運動を強力に支持した。権威を拒否し人々の精神的支柱となっているその凛とした姿にもまた、トルストイの面影が感じられるような気がしてならない」