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神戸市外大大学院との合同セミナー

12月14日(土)本学で神戸市外国語大学大学院との合同セミナー「現代文学の潮流」がおこなわれた。
神戸からは総勢8名の代表団が本学に来てくださり、本学からは院生・大学院進学が決まっている学生・大学院志望者を含め10数名の参加があった。

司会は岩崎務研究科長。
まず、神戸市外大の西条万里那さん(博士後期)がメキシコの作家カルロス・フエンテスの長編『澄みわたる大地』における映画的手法を具体的な例とともに紹介した。面白かったのは、フエンテスの描く都市には「見えない境界」があり、その境界を越えようとすると失敗するが、映画的手法はその都市空間の性質を補完する役割があるのではないかという指摘。それに、描写のし方がカメラのように視点を移動させるものになっているという指摘も説得力があった。

続く本学の笹山啓くん(博士後期)はヴィクトル・ペレーヴィンの本質に迫る発表で、「ポストモダニスト」と言われてきたペレーヴィンだが、じつはポストモダニズムの流行に対しては冷笑的だったこと、むしろ実存の根拠を真面目に追及していること、つまり「モラリスト」なのではないかという論を展開した。

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休憩をはさんで、神戸市外大の成田瑞穂先生が、フエンテスの『われらの大地』の中で言及されているヒエロニムス・ボスの三連祭壇画『快楽の園』との関係について刺激に満ちた講演をなさり、私がペレストロイカから現代までのロシア文学の流れのなかにペレーヴィンとタチヤーナ・トルスタヤを位置づけ、トルスタヤの手法を紹介した。

どの発表にもたくさんの質問が出され、とりわけ院生ふたりの質疑応答は時間を大幅に超過しておこなわれた。本学の学部生たちから活発な発言があったのも嬉しい。
私はフエンテスの『アウラ』がとても気に入っているが、お話を聞いて『われらの大地』も読みたくなった。ぜひ翻訳を出していただきたい。

この後、場所を移し食事を楽しみながら、ラテンアメリカとロシアの熱い交流が夜まで続いたのだった。


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2013年12月17日 13:33に投稿されたエントリーのページです。

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