« 革命とダダイズムが共存した街チューリヒ | メイン | 神戸市外国語大学との大学院合同セミナー »

『妖婆 死棺の呪い』

アレクサンドル・プトゥシコ監督の映画 『妖婆 死棺の呪い』が来月新たにDVDとして発売されることになり、その解説を書かせていただいた。
日本語タイトルはおどろおどろしいが、じつはゴーゴリの中編 『ヴィイ』 を原作として1967年にモスフィルムで制作された文芸映画である。

ヴィイというのは「地面まで伸びた長い瞼」を持つ魔物。スラヴの民間信仰をもとにゴーゴリが生み出したもので、モデルになった聖者カシヤーンは「邪悪な目」をしておりその目で睨まれた者は死ぬと言われる。

BNN_jk.jpg
    cMosfilm Cinema Concern 1967
    発売元:株式会社アイ・ヴィー・シー
    価格:3,800円(税抜)


怖いけれどどこか滑稽。可笑しいけれどかなり恐ろしい。
カーニバル的な「笑い」とフォークロア的な「恐怖」の二律背反がまさにゴーゴリの世界そのものである。
魔女を演じる女優ナターリヤ・ヴァルレイのぞっとするほどの美しさも見ものだ。

威嚇するような眼差しで見つめる聖像画のキリスト、ホマーの姿が見えずに探しまわる魔女、長い瞼をあげてホマーを見つけようとするヴィイ、内心の声に逆らってヴィイを見てしまうホマー。『妖婆 死棺の呪い』は視線が交錯する場であり、キリスト教と土着の信仰、笑いと恐怖が入り交じった多義的な映像空間である。

なお他にもソヴィエト時代に制作された映画 『鏡』 『僕の村は戦場だった』 『アンドレイ・ルブリョフ』 『炎628』 『チャイコフスキー』 『ゼロ・シティ』 などがアイ・ヴィー・シーより同時にリリースされる予定。

About

2013年11月27日 23:13に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「革命とダダイズムが共存した街チューリヒ」です。

次の投稿は「神戸市外国語大学との大学院合同セミナー」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。