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「もっと海を」

11月8日、本学総合文化研究所で山口裕之教授(ドイツ文学)のコーディネートと司会による夕べ 「もっと海を: ヨーロッパで多言語世界の文学を考える」がおこなわれた。
イルマ・ラクーザさんと多和田葉子さんの対談と朗読を満喫する。


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イルマ・ラクーザは、スロヴェニア出身の詩人にして翻訳家。ロシア語、ハンガリー語、フランス語などからドイツ語への翻訳を手がけてきたというポリグロットである。チューリヒ在住。「もっと海を」は彼女の本のタイトルでもある。
ラクーザさんも多和田さんも、境界を越えて言葉を扱う人、言葉と言葉のはざまを探る人であり、その「はざま」が「海」と名づけられている。

面白かったのは多和田さんによる日本語とドイツ語の混じった詩の朗読。これは、黙読するだけでなく声にして初めて真価がわかるという類の作品だ。
ロシアの詩人マリーナ・ツヴェターエワの詩をラクーザさんがロシア語原文と自ら訳したドイツ語訳で読み、それから前田和泉さんが自ら訳した日本語訳で読むという3言語による詩の共演=饗宴も楽しかった。
ラクーザさんの『もっと海を』の一部を山口ゼミの学生たちが訳したものも朗読で披露される。

それにしても、ドイツ語通訳もご自身でなさりながら対談も朗読もし、かつ会場からの質疑応答も日本語・ドイツ語の両言語を自在に操りながら難なくこなしていた多和田さんの才能と言語感覚の素晴らしさには本当に感嘆した。


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2013年11月 9日 19:37に投稿されたエントリーのページです。

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