先日モスクワの "Б2" というクラブへ、エヴゲーニイ・グリシコヴェツとグルジアのバンド「ムグザヴレビ」のコンサートを聞きに行った。
グリシコヴェツは、一人芝居で人気を博している作家。ムグザヴレビ(グルジア語で「旅人」を意味する)は、2006年にギギ・デダラマジシヴィリという俳優によってトビリシで結成された有名なバンド。
この両者が昨年秋から「共演」している―グリシコヴェツの新しいプロジェクトである。
会場は文字どおり立錐の余地もないほど超満員だった(つまりほとんどが立ち見のフロアなのだが、こんなにたくさんのお客さんを入れたら危ないではないかと思うほどだった)。
正式には、Mgzavrebi&Grishkovets / ≪Гришковец и ?????????≫ と書く。
スラッシュの後は、ロシア語とグルジア語だ。
面白かったのは、コンサートも2言語併用だったこと。
原則としてムグザヴレビの音楽の合間にグリシコヴェツの「語り」が入るのだが、ギギはボーカルでもあり、曲の合間のナレーションはロシア語、歌はグルジア語と使い分けていた。グリシコヴェツの語りはもちろんロシア語だ。
そういえば楽器も、ギターやパーカッションなどポップなものと、グルジアの民族楽器パンドゥーラなどが違和感なく併用されていた。
ギギの歌うグルジア語の歌詞とグリシコヴェツのロシア語の語りがどの程度呼応しあっているのかはわからないが(聴衆の大部分もわからないだろう)、ムグザヴレビの気持ちのいいリズミカルな曲とグリシコヴェツのちょっと切ないリフレインが不思議な一体感を醸し出していた。
グリシコヴェツ
「友への伝言(留守電に残された)」
友よ、話がしたいんだ。話さなくちゃ、とても話さなくちゃいけない。
心配しなくていい。何も聞きやしないから。
借り貸しはいやだし、何のアドバイスも要らない。
ただ話がしたいだけ。話すだけでいいんだ。わかるだろ?
友よ、わかるだろ、ただ話すだけでいいんだ。
あのときどっちが正しくてどっちがいけなかったかをはっきりさせようってわけじゃない。
ただ話したいだけなんだ。君と。