ペトルシェフスカヤの幻想小説集がまもなく刊行される。
リュドミラ・ペトルシェフスカヤ 『私のいた場所』 沼野恭子編訳(河出書房新社、2013年)。
全部で18編から成る短編アンソロジーだ。
独特な後味の残る不思議な物語、ちょっと怖い怪談のようなピリ辛の掌編、甘い隠し味のお伽噺...。現実と幻想がさまざまな比率で調合されていて、どれひとつ同じ味わいのものはない。リアリストとして紹介されてきたペトルシェフスカヤの幻想作家としての新たな魅力をぜひ堪能していただきたい。
「あとがき」の拙文から一部抜粋しよう。
「総じてペトルシェフスカヤの幻想小説は、愛を求め、あるいは愛にもがき苦しむ魂が、ふと現世を突き抜けて死者の世界に近づき、生と死の境界領域をわけもわからずにさすらったり死者と出会ったりすることによって、生の意味や愛の本質を感得する。『人生にはほんのときたま、生と死の間にはわずかな距離しかないということがわかる瞬間がある』(『三つの旅―メニッペアの可能性』)。このことを作家はいろいろな形で繰り返し物語っているかのようだ」