ロシアで最も人気ある児童文学作家のひとり Григорий Остер グリゴリー・オステル。何しろ面白い! 破天荒に面白い!
日本ではすでに次の2作品が紹介されている。
絵本 『細菌ペーチカ』(上下)毛利公美訳(東宣出版、2011年)
童話 『いろいろのはなし』毛利公美訳(東宣出版、2013年)
とくにお勧めの 『Сказки с подробностями いろいろのはなし』 (1989)は、メリーゴーランドの木馬たちが遊園地の園長さんにお話をせがむ場面と、園長さんのお話テクストが交互に現れる。木馬たちは、ひとつの話が終わりそうになると、その中に出てきた登場人物(登場動物)について次から次へと「もっと подробности(詳しい話)を聞かせて」と頼み、園長さんがそれに応えて、お話をいわば「枝分かれ」させて語っていく。
訳者の毛利公美さんが「あとがき」で書いているとおり、「ロシア初のハイパーテクスト」と言われている。たしかに、1本の太い幹のようなプロットがあるわけではなく話がいろいろな方向に枝分かれしていくという意味ではハイパーテクスト的だが、どこから読んでも構わないというタイプのものではなく、最初から順に読んでいくと既出のお話とあちこちでリンクしていき、最後にまるでジグゾーパズルのすべてのピースがぴたりとおさまるように収束する。見事というほかない。
オステルは今年末に来日すると聞いている。今から楽しみだ。