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2013年5月 アーカイブ

2013年5月 5日

『群像』 6月号 「雨の柱廊」

『群像』 2013年6月号の随想欄にエッセイを書かせていただいた(近日発売)。
題して「雨の柱廊―イタリアの中のロシア」。
一部紹介させていただく。

「(前略)背の高い円柱が立ちならび幾重にもアーチが連なるなかを歩いていると、一瞬気の遠くなるような遠近法にからめとられそうになる。いつのまにか小雨が降りだし、高い天井にヒールの音がよけい大きく響きわたる。建物の内部でもなく、雨に濡れる外部でもない中間的な場所。いや、雨に包まれた内部でもあり、解放感に富む外部でもある両義的な空間ともいえる。(後略)」

ボローニャの柱廊
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2013年5月 9日

講演 「この気持ち いったい何語だったらつうじるの?」

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来る5月30日(木)作家でマンガ家の小林エリカさんをお招きして講演会をおこなう。

小林エリカ講演会 「この気持ち いったい何語だったらつうじるの?」

日時: 2013年5月30日(木)16:00~17:30
場所: 101教室
共催: 総合文化研究所

小林エリカさんは、イラスト、コミック、小説、映像とジャンルを軽やかに越えて才能を発揮しているアーティスト。世界を旅して、ザロ・ザメンホフ(エスペラント語の創始者)、ミカロユス・チュルリョーニス(リトアニアの画家・作曲家)、多和田葉子(日本の作家)、イサク・ディーネセン(デンマークの作家)、マフムード・ダルウィーシュ(パレスチナの詩人)、ヴィスワヴァ・シンボルスカ(ポーランドの詩人)らについて考察している。

著書 『親愛なるキティーたちへ』 では、アンネ・フランクと父・小林司と自分自身の3つの日記を重ね合わせることによりさまざまな場所と時を幾重にも交錯させ確かな詩的世界を創りあげている。
現在、ウェブ上で放射能の歴史をめぐるコミック「光の子ども」を連載中。

2013年5月12日

「内向き志向」なんてどこ吹く風の留学事情

最近、日本の大学生が留学をしたがらなくなっていると言われる。
たしかに数字の上では、2004年頃から海外の大学へ留学する学生の数は減少しているのだそうだ。世間ではこうした傾向を「内向き志向」などと称し、国際的な人材が育たなくなるのではないかと危惧している。

しかし!
本学にはまったくそのような危惧はない。それどころか逆に、留学希望者は年々増加しており、積極的に留学を学生生活の一部として捉え、さまざまな異文化体験を将来に役立てようと考える主体的な学生が増えている。大学としても留学を支援するために奨学金や単位認定などでいろいろな工夫をしている。
つまり本学の留学実態は世間の「風評」とはかなりギャップがあるのだ。

例えば、ロシア語に限って言えば、本学が交流協定を結び公式に「派遣留学」をしているのは4校。モスクワ大学、ロシア人文大学、ペテルブルグ大学、国際関係大学である。
それぞれの大学に毎年数名ずつ、選抜を経た優秀な学生が1年間派遣される。合計で10名程度ということになるが、今年はこの派遣留学に40名もの応募があった!

選に漏れた学生たちのほとんどが「休学留学」に切り替えて1年間の留学をする予定だ。つまり少なくとも40名ほどの学生(3年生)が2013年秋からの長期留学を準備しているということである。その他、4年生になってから半年~10か月ほど留学するという学生もいるし、春休みや夏休みに短期留学する学生にいたっては1年生から4年生まで数えきれないほどだ。

しかも、これまでモスクワとペテルブルグが中心だった留学先が、ぐんと多様になってきている。最近はウラジオストクにある極東大学の人気が高まっているが、イルクーツク大学に留学した人もいれば、ロシア語が使えるロシア以外の地域としてグルジアのトビリシ大学、ベラルーシのミンスク大学、キルギスのキルギス大学に留学している人もいる。
イギリスのリーズ大学に留学してロシア語の授業に出ていたという人もいれば、モスクワ大学とリーズ大学の両方に半分ずつ滞在してロシア語と英語の両方に磨きをかけてきた人もいる。
1年生の終わる春休みに1か月間「モスクワ・ペテルブルグ2都市2大学留学プログラム」に参加した後、3年生であらためて長期留学をするという人も多く、これは非常に効果的だ。

このように、東京外国語大学の学生たちは留学に大変意欲的である。
留学の成果というのは語学の上達だけにとどまるものではなく、自己管理能力の向上や積極性の獲得などさまざまなプラスの効果をもたらす。一言で言うなら、ひとまわり人間が大きく逞しくなって帰ってくることが多い。


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 イルクーツク

2013年5月26日

ゼミ企画 文芸フェスを開催

3年ゼミの豊田宏くんの発案により、ゼミ企画「文芸フェス! 村上春樹は来ないけど(笑)」をおこなうことになった。
村上春樹の最新話題作 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 について自由に語りあう「読書会」である。


「文芸フェス! 村上春樹は来ないけど(笑)」
日時: 2013年7月5日(金)17:40~19:30
場所: 422教室(総合文化研究所セミナー室)
参加: 無料、だれでも歓迎!

ふつう「文芸フェス」といえば、著者(や訳者)をお招きしていろいろお話ししていただいたり朗読したりという形が多いと思うが、この企画では本来の主人公である村上春樹さんは登場しない。学生や院生たちが集まってワイワイ楽しく自由に感想や発見を交換しあい、互いに「読み」を刺激しあい深めようというもの。タイトルはそこから来ている。

目下、豊田くんを中心にフェスの内容を検討し、着々と準備を進めているところだ。
プログラムで決まっているのは、あらすじ紹介、朗読、「村上春樹とロシア文学」についての報告、リスト『巡礼の年』の「ル・マル・デュ・ペイ」鑑賞、「村上春樹と音楽」についての報告、トークセッションなど。ポスターも作成中。

乞うご期待!


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2013年5月27日

女帝エリザヴェータの文化的功績

2012年度「ゼミ指導教員が推薦する優秀卒業論文」として
秋保友美さんの卒論 「女帝エリザヴェータ~その二面性と文化発展における功績~」 が本学ホームページに掲載されている。
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http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/kyoumu/doc/yusyu24_04.pdf


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ロシア史では、ピョートル大帝とエカテリーナ2世はその業績(プラス面もマイナス面も含めて)がさまざまな角度から論じられるが、この2人の間に在位したエリザヴェータ女帝(在位1741~1761)は、えてして「お洒落で気まぐれなだけの女帝」というステレオタイプで見られがち。この論文は、そうしたステレオタイプにとらわれずになるべく客観的にエリザヴェータを評価しようと試みたものだ。

その結果、エリザヴェータは、モスクワ大学を設立して学問の振興をはかり、演劇や音楽の分野の発展に寄与し、死刑制度を廃止するなど、後世に大きく影響する数々の功績を残した。つまりロシア文化の発展という観点からすると多大な貢献をした。エリザヴェータは西欧的でもロシア的でもある二面性を持ち、外交的には西欧路線をとり、精神面ではロシア的なものを残すという、ある意味で合理的なバランスのとれた政治をしたのではないかとの結論が導かれた。

秋保さんは、3年ゼミの授業でユーリイ・ロトマンの『ロシア貴族』を精読し、その演劇性についてプレゼンテーションをする中でエリザヴェータ女帝と出会い、卒論へと、とてもいい形で発展させたと思う。

2013年5月28日

陸上競技部OB 「鳳翼倶楽部」

この度、2年の任期ということで東京外国語大学陸上競技部の部長をお引き受けした。
本学の陸上競技部は1924年に誕生。以来、さまざまな競技会や記録会のほか、良きライバルだった大阪外国語大学との対抗戦に参加し、来年で創立90周年を迎える伝統あるサークルである。

まるで適任ではないと思える私が部長をお引き受けしたのには理由がある。
私自身が東京外国語大学の学生だった頃、岡本正巳先生に大変お世話になったが、その岡本先生が陸上競技部OBとして熱心に学生たちの活動を支援していらしたことを亡くなられた年に知った。今回はそのご縁で、せめてものご恩返しをさせていただこうと思った次第である。
先生は非常勤講師として本学でロシア語を教えていらしたが、私たち同級生3人を毎週のようにご自宅に呼んでロシア語の勉強会をしてくださっていた。高崎の別荘に招いてくださったこともあり、本当に面倒見のいい恩師であった。

先日、現役選手を支える陸上競技部OB組織である「鳳翼倶楽部」が、都内某高層ビルのレストランで部長就任の会を開いてくださった。ありがとうございました。
たいしたことはできませんが、どうぞよろしくお願いいたします。


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鳳翼倶楽部の皆様と現役女子主将、男子主将
 

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