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国立大学の「国際化」に向けて切望すること

去る3月8日、国立大学協会は総会を開き、国立大学の国際化に向けて以下のような数値目標を発表した(まるで社会主義時代の計画経済のノルマのようだが)。

①受入留学生数の割合を2020 年までに学部と大学院合わせて10%にすることを目指す。
②派遣留学生数の割合を2020 年までに学部と大学院合わせて5%にすることを目指す。
③外国人教員比率を2020 年までに倍増させることを目指す。
④英語での授業実施科目数を2020 年までに学部、大学院ともに倍増させることを目指す。
⑤国際化に関連した数値目標を設定している大学数を2020 年までに倍増させることを目指す。

国立大学が「グローバル人材」を輩出するべきだとの認識は素晴らしいし、「積極的な国際交流と国際貢献活動の推進」を目指すべきだとの見解にもまったく異論はない。
しかし、日常的に国際交流に携わっている者として切実に願うことがある。それは、数字の辻褄を合わせるのではなく内実をともなう「国際化」を日本が本気で目指すのであれば、大学の自助努力にすべてを任せるのではなく、強力な国の支援体制がなければならないということである。

何よりも緊要なのは、外国人教員・研究者・学生を受け入れる体制基盤の整備、とりわけ住居を確保することである。それも、外国と比べて質的にひけをとらないグローバル・スタンダードの宿舎や寮を建設することが必要だと思う。これは個々の大学にできることではない。

国、文部科学省あるいは国立大学協会は即刻、全国の国立大学における外国人教員・研究者・学生の受け入れ体制の(かなり悲惨な)現状を調査し、外国人が「倍増」(!)しても対応できるよう必要度の高いところからどんどん宿舎を建設していくべきだ。
外国人を呼んだはいいが住むところは本人任せ、というのでは話にならない(初めて日本を訪れる外国人が、敷金、礼金、保証金、斡旋手数料等の支払いを要求される民間アパートを借りるのはきわめて難しい)。
逆に、人間らしい快適な住居を提供してこそ日本イメージはよくなり日本への貢献も期待できるようになるだろう。

3月8日の報告書を見ると、文部科学省を始めとする政府機関に「期待」することとして「国際化に関係する環境整備のための財政支援の拡充」「留学生宿舎の整備のための施設整備費補助の充実」という項目が挙げられているが、留学生の宿舎のみならず、ぜひとも外国人教員・研究者の宿舎も視野に入れた全面的な財政的支援を強く要望したい。


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左から森田耕司(本学ポーランド語)、マナトクリ・ムサタエワ(カザフスタン国民教育大学・本学の外国人研究者)、オリガ・アラーポワ(本学ロシア語・特定主任外国語教員)、島田志津夫(本学中央アジア)、小松久男(本学中央アジア)の各氏と会食。使用言語は主にロシア語だった。

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2013年4月29日 15:09に投稿されたエントリーのページです。

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