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外国語能力の高い人材を求めるなら ~ ビジネス界への提言

日本企業の多くが海外への展開を模索するなか(それを「グローバリゼーション」と呼ぶ気にはならないが)、外国語能力の高い人材が求められている。

当然のことながら「留学したらだれでも英語ができるようになる」などといった短絡的な思考はもはや通用しない。日本企業が将来を見すえ真の国際競争力を養いたいのなら、「対象地域の言語」とともに広い意味での「対象地域の文化」を理解し熟知した人材を求めるべきである(本学ではこうした人材を「国際人」と称している)。
ここでいう「文化」とは、文学・芸術といったいわゆるハイカルチャーだけでなく、対象地域の人々の世界観や風習、伝統、信仰などを広く含む「知の総体」である。対象地域の言語を学ぶということは言語を通してそうした異文化を身につけるということに他ならない。

しかし、長い歴史のうちに蓄積された異文化が一朝一夕で身につくはずがないことも火を見るより明らかだ。大学に入学してから英語以外の外国語を一から学び始める場合、就職活動のおこなわれる3年次にその言語と文化に通暁していることなどまず望めない。

そこで、世界のさまざまな地域への進出を考えている日本のビジネス界に提言したい。
異文化習得(外国語の習得を含む)の教育には時間がかかることを考慮し、人文系大学院生の採用をもっと積極的にしてはどうか

ふだん身近に院生たちと接していると、学部生より言語能力が高く、主体性と責任感にもすぐれ、誠実で礼儀正しい人が多い。一言で言うなら、院生は学部生よりずっと「大人」である。これは持論だが、昔と比べて日本人の寿命が伸びた分(ゴムを伸ばしたところを思い浮かべればいい)「成長」が遅くなり、大人になる年齢も後ろにずれてきているのだ。
学部4年の後、大学院博士前期課程(いわゆる修士課程)2年を修了した24-25歳くらいで就職するのが、人格的成熟という観点からしても望ましいのではなかろうか。

日本の社会全体がもっと人文系院生の雇用に積極的になれば、教育現場である大学・大学院にも良い影響が現れるはずだ。知的レベルが高く充分に適応能力のある院生が、厳しい雇用状況を嘆いているのが現状だが、研究者になる道以外に実社会でばりばり働ける希望を持ちつつ専門的な勉強を続けられるのであれば、院生のモチベーションも上がるに違いない。
とりわけ語学教育と地域文化教育を丁寧に施している本学大学院は、さらに多くの優秀な人材を育てていけるだろう。

日本社会は人文系大学院生をもっと活用すべきである。

なお、12月4日(火)11:45-12:15 115教室において本学学生のための大学院進学説明会をおこなう。
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2012年11月27日 13:59に投稿されたエントリーのページです。

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