4年ゼミで講読しているテクストは、アレクサンドル・ゲニス「赤いパン」という評論。
この本に収められている。
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Александр Генис. Иван Петрович умер. М.: Новое литературное обозрение, 1999.
「ソヴィエト文明の料理の諸局面」という副題にあるとおり、ソヴィエト時代の食のありようを文化学的に捉えたウィットとアイロニーに富むエッセイだ。
食に対するロシアのインテリたちの伝統的な禁欲的態度を「料理のニヒリズム」と呼び、一度に3000人ものスープを提供する「台所工場」の集団食を無神論の世界における「似非宗教儀式」と喝破する(ユーリイ・オレーシャの『羨望』だ!)。1960年代に「食の豊かさ」がどれほどしつこく繰り返されて神話となったか、プロパガンダに用いられる料理がどれほど「ヴェジテリアン」的志向を持っていたか等じつに痛快。