モスクワ川のほとりに「Музеон ムゼオン」という芸術公園がある。現代芸術専門の美術館、中央芸術会館(ЦДХ)のあるところだが、この公園には700点以上もの彫刻(その多くがソ連時代のもの)が屋外に展示されている。
ここで「Искусство в быту (日常の中の芸術)」という屋外展示をやっているというので見に行った。ヴェーラ・ムーヒナとナジェージダ・ラーマノワによる1925年のアルバムで、型紙が付いていて「自分の洋服を自分で作ろう」というコンセプト。
夜はライトアップされるのだろう、こんな感じだった。
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モスクワは бабье лето (女の夏)と呼ばれる「小春日和」が1週間ほど続き、散歩をするにはもってこいの陽気。
ゆっくりムゼオンの彫刻を見てまわって印象的だったのは、スターリンの銅像に鼻が欠けていたこと(まさにゴーゴリの『鼻』みたいだ!)。これは、レーニンやスターリンの記念碑を大量に手がけた彫刻家 Сергей Меркуров セルゲイ・メルクーロフ(1881-1952)の作品である。元はどこに立っていたのか知らないが、フルシチョフの雪どけ時代に撤去され(たぶんそのとき鼻がもがれ)放置されていたものを、ムゼオンができたときここに移された。1992年のことだ。
意図的に修復せず、鼻のないスターリンを歴知的事実としてそのまま設置してあるのだと思う。
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そして1998年、このスターリン像のすぐそばに Евгений Чубаров エヴゲーニイ・チュバロフ(1934年生れ)による彫刻コンポジションが配置された。スターリン時代に粛清された人々に捧げられた作品だという。
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こうしてムゼオンには、スターリン時代の雰囲気を体現した空間が再現され、木漏れ日の中で権力者と抑圧された人々が永遠に対峙している。
陽光もここではひんやり冷たく感じられた。