高野史緒さんの小説が第58回江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)に選ばれた。その名も『カラマーゾフの兄妹』! 「兄弟」ではなく「兄妹」である。8月刊行予定と聞く。
おめでとうございます!
その高野さんが編者となっているのが『21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集 時間はだれも待ってくれない』(東京創元社、2011年)だが、これが面白い。
ルーマニア、チェコ、スロヴァキア、ポーランド、ハンガリー、セルビアといった「東欧」の作家によるSF・幻想小説を1編ずつ集めた画期的なアンソロジーである。
ベラルーシの作家アンドレイ・フェダレンカの「ブリャハ」(越野剛訳)では、チェルノブイリ原発事故後の汚染地域での「まるでこの世の終わりのよう」な殺伐とした場面が描かれている。フクシマ原発事故を生々しい現実として体験した身には、SFではなく、まったくリアルな小説に感じられる。
チェコのミハル・アイヴァスの「もうひとつの街」(阿部賢一訳)は、日常の思いがけないところに潜む「異界」に惹きつけられる「私」の物語。ここに訳されているのは全体の一部(2章分)だというが、これはぜひ全部読んでみたい。