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ウリツカヤとアクーニンを支持する

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2月4日(土)零下20度という極寒のモスクワで、1か月後の3月4日に予定されている大統領選で「公正な選挙」が行われるよう求める人々が、市内中心部の行進と第3回目の大規模な集会を行った。不正や汚職や権力濫用にこれ以上黙っていられないというロシアの人々の強い意志を表明したものである。
モスクワだけでなく、サンクト・ペテルブルクやウラジオストク、ハバロフスク、ユジノ・サハリンスク、ニューヨーク、パリ等でも同様のデモが行われたという。

今回の一連の「反体制」的な市民行動には顕著な特徴がある。それは「パンをよこせ」という経済的な要求ではなく「正義のための」闘いだということ。もちろん貧富の差が広まるばかりのロシアに経済的な不平等への不満が鬱積しているのはたしかだ。しかし今、人々の怒りはむしろ政権の不正や欺瞞、ソ連時代をそのまま引き継いでいるような強権的な体制に向けられている。
そしてこの「正義」の市民運動を強力に支えているのが作家、音楽家、ジャーナリストら文化人たちであり、とりわけリュドミラ・ウリツカヤとボリス・アクーニンが人々の精神的・良心的な支柱となりつつある。
市民組織「Лига избирателей(有権者連盟)」が創設され、1月18日に記者会見が行われたが、この「有権者連盟」に作家ウリツカヤ、アクーニン、ドミートリイ・ブィコフ、ロックグループ ДДТ のリーダーであるユーリイ・シェフチュク、テレビ司会者レオニード・パルフョーノフ、慈善家の医師「ドクター・リーザ」ことエリザヴェータ・グリンカらが参加しているのである。
連盟は声明を発表し次のような宣言をした。

「われわれが目指すのは、公正な裁判、公正なマスメディア、公正な政治、国家と市民の公正な関係である。われわれが目指すのは、地方選挙から大統領選挙にいたるすべての公正な選挙であり、アクセスできるあらゆる法的手段を用いてそのために闘う」

何度も繰り返されている大事な理念が честный(公正な、正直な、誠実な)ということである。
ウリツカヤは記者会見でこう述べている。

「有権者連盟が要求しているのは最小限のことで、公正な選挙を行わなければいけないということです。
1968年にソ連軍がプラハに侵攻したとき、赤の広場のデモに出た人は7人でした。あれから大きな変化が起こって、今私たちは7人だけではなくなりました。ボロトナヤ広場(注:昨年12月10日のデモのこと)もそれに続く集会も、非常に重要な兆しです。私たちは7人ではない。もう少し多くなったんです。これはとても重要なことです」


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ウリツカヤは、2月4日の行進と集会に参加し、冷凍庫の中にいるような寒さのなか12万人集まったと言われる(主催者側発表)人々の前に立ち、「ここに集まっているのは素晴らしい人たちです。今日が新しい、とても良い歴史の始まりだということを確信しています」と語った。

アクーニンは、昨年12月10日のボロトナヤ広場の集会では、モスクワ市長選挙も公正におこなわれるべきだと主張し、24日のサハロフ大通りの集会では、市民運動の団結力の強さについて次のように語った。

「ここには本当にさまざまな人たちが集まっています。互いに異なっています。それで彼ら(政権側)は、私たちに言い争いをさせ分裂させようという幻想を抱いていましたが、そんなことはできませんでした。これからもできないでしょう。それはとても簡単な理由によるものです。私たちを結びつけている感情のほうが、私たちを仲間割れさせるものよりも何倍も強いということです」


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クリスマスイブのこの日、アクーニンは「来年は大変な年になるでしょう。でも私たちの年になるだろうと信じています。どうか良い年を! 新年の新しいロシアおめでとう!」とスピーチを締めくくった。
そして昨日2月4日、行進にも集会にも参加して「凍えそうになった」というアクーニン。『ノーヴァヤ・ガゼータ』紙のインタビューで「なぜ行進に参加しなければならないのか?」という質問に、ユーモアを込めてこう答えている。

「政権は私たちの言うことに耳を貸しません。耳が遠いようです。だから、もっと大きな声で叫ばなければならないのです。2月4日私たちの数が多ければ多いほど、私たちの声は大きくなります。酷寒などなんてことはないということを見せつけてやらないと」
アクーニン自身のブログより。
 ↓
http://borisakunin.livejournal.com/


下の写真は、もうひとりの作家ブィコフが行進に参加している様子。真ん中でにこにこしているのがブィコフだ。掲げているプラカードには「舟を揺らさないで。私たちのネズミが吐き気をもよおしているから」と書いてある。
彼は昨年12月24日の集会では、集まった人々に、立場を異にしていても「内紛」を起こしてはならないと呼びかけた。「男と女の間には、共産主義者とリベラルの間にあるよりもっと大きな違いがあります。それでもなんとか折り合いをつけているではありませんか。ここにいる私たちも同じです。話し合うこと、さらには互いに愛し合うことを学びましょう」


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2012年2月 5日 15:02に投稿されたエントリーのページです。

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