« 『東京物語』 | メイン | 【お知らせ】 来たれ! ロシア会 »

市民の心を動かすナヴァーリヌィのブログ

12月4日(日)のロシア下院の選挙結果をめぐり、10日(土)と24日(土)の2度にわたりモスクワを初めとするロシア各地で抗議デモや集会が行われた。主催者側の発表によると、24日のモスクワのデモには12万人が参加したという。

下の写真はモスクワの「サハロフ博士大通り」で開かれた集会の様子。テントの上のほうに「ロシアは自由になる!」、奥には「公正な選挙を」と書かれている。
 
miting 2011.12.24.jpg


かつての「反体制科学者」アンドレイ・サハロフ博士の名を冠した通りが集会の場所に選ばれたのは、もちろん偶然ではあるまい。
これほど大規模なデモが実現した理由のひとつにあげられるのがインターネットだ。いまロシア語のネット世界で最も大きな影響力を持っているのが Алексей Навальный アレクセイ・ナヴァーリヌィ(1976年生れ)のブログだと言われている。
 ↓
http://navalny.ru/

ナヴァーリヌィは弁護士で社会活動家。
自らのブログに РосПил(ロスピル)という汚職撲滅サイトを特設し、政府や地方自治体の資金が買収や賄賂に使われていないか監視していたが、今回、下院選挙不正疑惑に抗議する市民デモに参加するよう呼びかけを掲載した。
以下に、訳文を添えて「アレクセイの呼びかけ」の一部を引用しよう。

navalnyi.png


Бороться за свои права это легко и приятно. И это совсем нестрашно. Не верьте глупостям о неизбежных беспорядках, драках с милицией и горящих автомобилях.(自分の権利のために闘うのは簡単ですし快いものです。少しも怖くなどありません。無秩序になるのは避けられないとか警察と殴り合いになるとか車が燃やされるといった馬鹿げた噂を信じてはいけません。)

Единственное, но самое мощное оружие, нужное нам есть у каждого -это чувство собственного достоинства.(私たちに必要な唯一の、しかし最も強力な武器を私たちひとりひとりが持っています。それは自尊心という武器です。)

Люди с чувством собственного достоинства есть. Их много. И я знаю, что тысячи их стоят сейчас на Площади Революции и на Болотной. В Москве и в других городах страны.(自尊心を持った人はいるのです。しかもかなり沢山。そういう何千という人たちが革命広場やボロートナヤ広場にいることを私は知っています。モスクワにもその他の都市にも。)

Нет никаких репрессий и дубинок. Нет задержании и арестов на 15 суток. Все это чушь. Нельзя избить и арестовать сотни тысяч и миллионы. Нас даже не запугали, а просто на какое-то время убедили, что жизнь жаб и крыс, жизнь безмолвных скотов, это единственный способ получить в награду стабильность и экономический рост.(弾圧もなければ警棒を振り回されることもありません。この15日間拘留も逮捕もなかったではありませんか。そんなのはすべて戯言なのです。10万人や100万人を殴ったり逮捕したりすることなどできません。脅されることさえありませんでした。ただ、ヒキガエルやネズミ、口を閉ざした家畜のような生活をするのが、ご褒美に安定と経済成長を手に入れる唯一の方法だとしばらくの間思わされていただけなのです。)

Морок развеивается, и мы видим, что скотское безмолвие стало подарком только кучке жуликов и воров, ставших миллиардерами. Настало время сбросить оцепенение.(霧が晴れて目にするのは、家畜のように口を閉ざしていてもそれは億万長者になったコソ泥や盗賊の集団への贈り物になるだけだということです。もう茫然としている場合ではありません。)

Мы не скоты и не рабы. У нас есть голос и у нас есть силы отстаивать его. Все люди с чувством собственного достоинства должны чувствовать свою солидарность друг с другом. Неважно где они сейчас на площадях, на кухнях или в спецприемниках. Мы чувствуем свою солидарность с вами и мы знаем, что мы победим. Иначе быть просто не может. (私たちは家畜でも奴隷でもない。私たちには声があるのだし、声をあげて主張する力もあります。自尊心を持っている人ならだれでも互いに連帯を感じるはず。私たちはあなた方に連帯を感じています。そして私たちが勝つとわかっています。ただただそうでなければならないのです。)


24日の抗議デモの報道写真を見ると、街のあちこちに「コソ泥や盗賊の党はごめんだ」とか「私たちは家畜でも奴隷でもない」と書かれた大きな横断幕が掲げられているのが目につく。ナヴァーリヌィの上の呼びかけに応じたものであることは間違いない。

ちなみに、集会では活動家や音楽家らとともに作家のボリス・アクーニンとドミートリイ・ブィコフもスピーチをした。アクーニンは、市民のこの自発的な運動を「Честная Россия 公正ロシア」と名づけようと提案し、今や「честность(公正、誠実)」という言葉がキーワードなのだと語った。
集会の数日前アクーニンは、最新の歴史探偵小説 『Весь мир театр 世界はすべて劇場』 が「過激主義」でないかどうか警察にチェックされるという明らかな嫌がらせを受けている。彼の身が案じられる。
しかし、少なくとも24日はたいした混乱もなく平穏のうちに抗議のデモンストレーションは終わったようだ。

どうかこうした平和で民主的なデモや集会が今後も力で制圧されたりしませんように!
どうか честность(公正・誠実)と свобода(自由)を求める声がかき消されませんように!
そして、どうかけっして流血の事態になどなりませんように!

About

2011年12月25日 16:58に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「『東京物語』」です。

次の投稿は「【お知らせ】 来たれ! ロシア会」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。