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『東京物語』

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『東京物語』といっても小津安二郎の映画ではなく、「ロシア語通訳協会」発行のロシア語ガイドブックである。できたてのほやほやだ。タイトルは『Токио Моногатари - Токио глазами токийцев. История и современность トーキョー・モノガタリ ― 東京人の見た東京。過去と現代』。
このタイトルが秀逸だと思うのは、日本の古典文学が多く訳されているロシアでは、ジャパノロジストたちが『Исэ-моногатари イセ・モノガタリ』『Ямато-моногатари ヤマト・モノガタリ』などをロシア語に訳しているので「モノガタリ」という言葉が多少なりともロシア語に浸透しているのではないかと思うからだ。

それはともかく、この『東京物語』は今後、ロシア人を案内する際になくてはならない本になるに違いない。
銀座の老舗、歌舞伎、日本橋、築地、能の魅力、将棋の殿堂、芝泉岳寺と赤穂浪士、両国国技館、相撲、茶道などといった伝統的な「日本らしい」場所や文化の紹介の他、オタク文化とメイドカフェ、漫画・アニメ文化といったサブカルチャーにも目配りがきいている。フーテンの寅さん、阿部定、「男装の麗人」川島芳子、ジャサイア・コンドルといった東京の特定の場所にまつわる「有名人」がピンポイントで紹介されているのも面白い。
グルメ・ガイドも充実していて嬉しい。思わず「морской черт あんこう」と「вьюн どじょう」に目がいった。

ロシア語ガイド通訳の方たちが蓄積してきた知識と経験を凝縮したものなのだろう、表面的な旅行ガイドとは一線を画し、背景にある歴史や文化についてたっぷり薀蓄を傾けたロシア語による見事な日本紹介の書になっている。
日本に住んでいるロシア人の日本理解にも大いに役立つことだろう。

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2011年12月19日 21:30に投稿されたエントリーのページです。

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