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『知恵の悲しみ』

東京外国語大学で開催中の「外語祭」で11月22日(火)ロシア語科2年生によるロシア語劇が上演された。古典中の古典 Александр Грибоедов "Горе от ума" アレクサンドル・グリボエードフ 『知恵の悲しみ』 である(演出:峯岸永一)。

『知恵の悲しみ』は、外交官だったグリボエードフ(1795-1829)が1824年に完成させた戯曲だ。リベラルな考えを持つ主人公チャーツキイ(千葉元)が、3年の外遊を終えてモスクワに戻ってくると、愛するソフィヤ(吉田絢音)は心変わりして父親の秘書モルチャーリン(坂田礼)に恋している。そのモルチャーリンの本命は小間使いのリーザ(鶴田さおり)、リーザの好きな人はペトルーシカ(松本幸之助)と、尻取りのような恋愛模様が展開中だ。ソフィヤの父ファームソフ(田中裕真)は反動保守の頑迷な高級官僚。時あたかも農奴制のただ中、デカブリストの反乱が起こる前夜という情勢である。
ファームソフに代表される官僚社会の腐った人間性を歯に衣着せず辛辣に批判するチャーツキイ。でも彼は受け入れられず狂人扱いされてしまうのだった...。


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ロシア語学科で教鞭を取ってくださっているイリーナ・ダフコワ先生、浜野アーラ先生の多大なご尽力もあって、今回この古典の名作が完成度の高いオーソドックスな芝居に仕上がった。舞台に上がったどの学生もロシア語の発音が素晴らしくよかった! 長いセリフも多く大変だったと思う。衣装も当時の雰囲気をよく伝える素敵な出来だったし、音楽もまた物語によく合っていた。
みんな本当によく頑張りました!!


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ちなみに、この戯曲のセリフの多くが諺や名言として今でもよく使われる。

Счастливые часов не наблюдают.  「幸福なふたりは時の経つのも気付かぬもの」

И дым Отечества нам сладок и приятен!  「祖国のものなら煙でも懐かしく愛しい」

Ах, злые языки страшнее пистолетов. 「ああ、陰口はピストルより恐ろしい」

Где ж лучше? Где нас нет. 「隣の庭は青い」

Сюда я больше не ездок. 「ここへは2度と来るまい」

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2011年11月23日 12:14に投稿されたエントリーのページです。

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