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グレン・グールドの孤高

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渋谷アップリンクに映画 『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』 を観に行った。
グレン・グールド(1932-1982)と彼を身近に知っていた人々(恋人だった女たちも!)の証言で構成されたドキュメンタリー。グールドの生涯を丁寧になぞり、彼の孤高の精神を浮き彫りにした映画で、深い感銘を受けた。

細く長く繊細そうな指の美しいこと! ほとんどペダルを使わず、音をつなげずに弾く「ノン・レガート奏法」のため、一音一音がじつに粒だっている。こうした演奏法はバッハにこそふさわしいと納得する。
極端に低い専用の椅子を持ち歩いていたとか、演奏しながらハミングしていたとか、いつも手袋をはめていたとか、グールドの「変人」ぶりを伝えるエピソードには事欠かないが、それはたいしたことではあるまい。大事なのは、グールドがあくまでも自らの理想にこだわり、最後まで自らの美意識を貫いたことだ。
1957年のモスクワ公演が大成功だったのは、映画の中でアシュケナージが語っているとおり、鉄のカーテンを透かしてグールドの凛として独創的な演奏がロシアの聴衆の「魂」をしっかり捉えたということだろう。あるいは、芸術家の不幸に敏感なロシア人たちのことだ。当時まだ25歳だったグールドの姿に痛々しい不幸の予兆を感じ取ったのかもしれない。

ちなみに、映画の字幕を入れたのは宮澤淳一さん。ロシア文学者であると同時にグレン・グールドの専門家でもあり、グールド関連の著書、訳書がたくさんある。  

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2011年11月19日 22:49に投稿されたエントリーのページです。

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