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2011年11月 アーカイブ

2011年11月 1日

【お知らせ】小田原で体験授業

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来る11月27日(日)スペイン史の立石博高先生と小田原箱根商工会議所で出張体験授業をする。

13:30~14:15 「ロシア文化研究の可能性」沼野恭子 
14:25~15:10 「国民国家と言語――『最後の授業』を手かがりにして」立石博高教授 
15:20~15:50 学部改編の概要及び入学者選抜方法の説明 
15:50~16:30 個別相談会 

申込は電子メールで。 taiken1127@tufs.ac.jp 
詳しくはこちら
 ↓
http://www.tufs.ac.jp/examination/opencampus/taiken.html

2011年11月 2日

【お知らせ】河東哲夫氏講演会

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来る12月6日(火)16:00~17:30 研究講義棟 115教室において、河東哲夫氏による講演会をおこなう。題して「『ロシア』から考える。人間を、歴史を、あなたの仕事を、そして宇宙を」。

河東氏は、在ボストン総領事、在ロシア大使館公使、在ウズベキスタン・タジキスタン大使を歴任なさった外交官。現在、日本語・ロシア語・英語による国際ブログ "Japan World Trends" の代表として、国際情勢を分析し独自の情報を発信している。
 ↓
http://www.japan-world-trends.com/ja/

講演では、これまでのご経験をもとに、現代ロシアをどう捉えロシアとどう付き合っていくべきかについてお話しいただく。国際的な視野を持って世界で活躍したいという人、ぜひ聞きに来てください!

なお、河東さんは「熊野洋」のペンネームで 『遥かなる大地――イリヤーの物語』(草思社、2002) という小説を書いている。ソ連崩壊から新生ロシア初期にいたる過程を、パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』に匹敵するスケールで描いた物語で、ロシアの歴史や文化に通暁した河東氏でなければ書けない大河小説である。

2011年11月 5日

【お知らせ】国際シンポジウム「世界文学とは何か?」

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来る11月12日(土)14:00-18:20 東京大学本郷キャンパス文学部法文2号館2階1番大教室において、ハーヴァード大学のディヴィッド・ダムロッシュ教授 と作家の池澤夏樹さんを特別ゲストとする国際シンポジウム「世界文学とは何か?」が開かれる。
ダムロッシュ氏はアメリカの比較文学者。最近、著書の邦訳 『世界文学とは何か?』 奥彩子他訳(国書刊行会)が出版されたばかりだ。
 ↓

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シンポジウムについて詳しくはこちら。
 ↓
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/genbun/111112damrosch.html

2011年11月 6日

ウォッカより古いロシアの蜜酒「ミョート」

味の素「食」の文化センターが年4回 "VESTA" (ヴェスタ)という食文化専門誌を発行している。
2012年1月発売予定の "VESTA" 85号では責任編集を仰せつかり、「はじまりの酒」という特集を組むことになった。
 ↓
http://www.syokubunka.or.jp/vesta/no84.html

私自身も、ルーシ(ロシアの古称)の「いにしえの酒」、ウォッカよりも古い蜜酒「мёд ミョート」について原稿を書かせていただいた。蜂蜜を原料にした酒である。
中身は "VESTA" を読んでいただくとして、面白いのは、蜜酒だけでなく、お茶がロシアに普及するずっと以前に飲まれていた暖かい飲み物「ズビーチェニ」も、伝統的なお菓子「プリャーニク」も、「コヴリーシカ」という糖蜜パンも、みな蜂蜜を用いて作ったということだ。そもそも「蜜酒」をあらわす мёд という言葉が同時に「蜂蜜」そのものをも意味する。つまり古来ロシア人の食生活に蜂蜜は欠かせなかった。ロシア人は「蜂蜜を食べる者」だったのである。
ちょっと待って! ファスマー語源辞典で 「медведь メドヴェーチ(熊)」を引くと、この言葉は元来「поедатель мёда (蜂蜜 мёд を食べる者 поедатель)」から来ているとある。ということは、ロシア人は熊だった? そういえば、Медведев (メドヴェージェフ)というロシア人がたしかにいるではないか。

ちなみに、下はコンスタンチン・マコフスキーの 『蜜酒の杯』 1890年
 
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2011年11月15日

【お知らせ】 講演 「ロモノーソフとその時代」

来る12月2日(金)4限「ロシア文学概論」では、特別ゲストとしてモスクワ大学歴史学部准教授 Андрей Стрелков アンドレイ・ストレルコフ氏をお迎えし、「ロモノーソフとその時代」と題する講演をしていただく。


Strelkov_big.jpg ストレルコフ氏


今年は、科学者にして地理学者、詩作もすれば絵も描くという18世紀のマルチ・タレント
Михаил Ломоносов ミハイル・ロモノーソフ(1711-1765)の生誕300周年にあたる。
ロモノーソフはモスクワ大学の設立者でもある。だから、モスクワ大学は正式には、Московский Государственный университет имени Ломоносова ロモノーソフ名称モスクワ国立大学というのだ。

講演は通訳付き。226教室。
聴講自由。


2011年11月18日

『ロシア NOW』

2011年6月より、ほぼ1ヵ月に1度のペースで、『読売新聞』の朝刊に 『ロシア NOW』という4ページの新聞が折り込まれるようになった。
これは創刊号。
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2007年から『Российская газета(ロシア新聞)』社が世界各国の新聞社の販売網を利用して新聞体裁の刊行物を配布しているが、今回は読売新聞と提携して「日本版」を始めたのだという。日本を含め、すでにアメリカ、イギリス、インド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ブラジル、アルゼンチンなど14か国、9言語のバージョンで発行している。
ロシアに関する情報を提供し、文化交流・経済交流に貢献するというのが目的だそうだ。

ロシア政府がスポンサーだが、編集方針は、ロシアの新聞の単なる「ダイジェスト」ではなくそれぞれの国に合わせた内容にしているという。
たしかに最新号(第5号)を見ると、モスクワの科学技術博物館の増改築コンペで日本人建築家・石上純也氏が優勝したことや、モスクワで寿司職人コンテストが開かれたことなど日本関係の出来事が紹介され、「今月の本」という欄では、ロシア文学者・中村健之介氏の著書『ドストエフスキー人物事典』(講談社学術文庫、2011年)が取り上げられている。
第4号では現代ロシア文学のかなり詳しい紹介記事があり、評論家パーヴェル・バシンスキーのコメントも掲載されていて、質の高さを感じた。

日本のマスメディアは、残念ながらロシア関連の情報が非常に少ない。『ロシア NOW』が「報道の自由」を重んじ、ロシアの政治・経済・社会・文化・生活の現状について「偏らない情報」を提供していくなら、この折り込み新聞は画期的な意味を持つことになるだろう。

2011年11月19日

グレン・グールドの孤高

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渋谷アップリンクに映画 『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』 を観に行った。
グレン・グールド(1932-1982)と彼を身近に知っていた人々(恋人だった女たちも!)の証言で構成されたドキュメンタリー。グールドの生涯を丁寧になぞり、彼の孤高の精神を浮き彫りにした映画で、深い感銘を受けた。

細く長く繊細そうな指の美しいこと! ほとんどペダルを使わず、音をつなげずに弾く「ノン・レガート奏法」のため、一音一音がじつに粒だっている。こうした演奏法はバッハにこそふさわしいと納得する。
極端に低い専用の椅子を持ち歩いていたとか、演奏しながらハミングしていたとか、いつも手袋をはめていたとか、グールドの「変人」ぶりを伝えるエピソードには事欠かないが、それはたいしたことではあるまい。大事なのは、グールドがあくまでも自らの理想にこだわり、最後まで自らの美意識を貫いたことだ。
1957年のモスクワ公演が大成功だったのは、映画の中でアシュケナージが語っているとおり、鉄のカーテンを透かしてグールドの凛として独創的な演奏がロシアの聴衆の「魂」をしっかり捉えたということだろう。あるいは、芸術家の不幸に敏感なロシア人たちのことだ。当時まだ25歳だったグールドの姿に痛々しい不幸の予兆を感じ取ったのかもしれない。

ちなみに、映画の字幕を入れたのは宮澤淳一さん。ロシア文学者であると同時にグレン・グールドの専門家でもあり、グールド関連の著書、訳書がたくさんある。  

2011年11月23日

『知恵の悲しみ』

東京外国語大学で開催中の「外語祭」で11月22日(火)ロシア語科2年生によるロシア語劇が上演された。古典中の古典 Александр Грибоедов "Горе от ума" アレクサンドル・グリボエードフ 『知恵の悲しみ』 である(演出:峯岸永一)。

『知恵の悲しみ』は、外交官だったグリボエードフ(1795-1829)が1824年に完成させた戯曲だ。リベラルな考えを持つ主人公チャーツキイ(千葉元)が、3年の外遊を終えてモスクワに戻ってくると、愛するソフィヤ(吉田絢音)は心変わりして父親の秘書モルチャーリン(坂田礼)に恋している。そのモルチャーリンの本命は小間使いのリーザ(鶴田さおり)、リーザの好きな人はペトルーシカ(松本幸之助)と、尻取りのような恋愛模様が展開中だ。ソフィヤの父ファームソフ(田中裕真)は反動保守の頑迷な高級官僚。時あたかも農奴制のただ中、デカブリストの反乱が起こる前夜という情勢である。
ファームソフに代表される官僚社会の腐った人間性を歯に衣着せず辛辣に批判するチャーツキイ。でも彼は受け入れられず狂人扱いされてしまうのだった...。


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ロシア語学科で教鞭を取ってくださっているイリーナ・ダフコワ先生、浜野アーラ先生の多大なご尽力もあって、今回この古典の名作が完成度の高いオーソドックスな芝居に仕上がった。舞台に上がったどの学生もロシア語の発音が素晴らしくよかった! 長いセリフも多く大変だったと思う。衣装も当時の雰囲気をよく伝える素敵な出来だったし、音楽もまた物語によく合っていた。
みんな本当によく頑張りました!!


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ちなみに、この戯曲のセリフの多くが諺や名言として今でもよく使われる。

Счастливые часов не наблюдают.  「幸福なふたりは時の経つのも気付かぬもの」

И дым Отечества нам сладок и приятен!  「祖国のものなら煙でも懐かしく愛しい」

Ах, злые языки страшнее пистолетов. 「ああ、陰口はピストルより恐ろしい」

Где ж лучше? Где нас нет. 「隣の庭は青い」

Сюда я больше не ездок. 「ここへは2度と来るまい」

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