Владимир Любаров ウラジーミル・リュバーロフは、現代ロシアの素敵なナイーヴ画家だ。
ロシアの古い木版画ルボークを思わせる「へたうま」絵と言ったらいいだろうか。ソヴィエト時代へのノスタルジーをユーモアとペーソスで異化して独特の世界を作りあげている。
下は、彼の最新の画集 Владимир Любаров. Рассказы. Картинки. М.: ГТО, 2011. の表紙だが、ここでは「画家」として絵画作品を描いているだけでなく、「作家」として自伝的な物語もたくさん載せている。
リュバーロフの絵に出会ったのは、リュドミラ・ウリツカヤのお伽噺『Детство Сорок Девять 1949年の子供時代』がきっかけだった。彼はこの本にイラストを描いていて、それが物語と合っているような合っていないような、なんとも微妙な「距離感」を保っていたので、とても惹きつけられたのである。もちろん何よりも気に入ったのは、絵自体のユニークで神話的な雰囲気だったけれど。
「小春日和」
「パン」
「魚の日」
ウラジーミル・リュバーロフは1944年モスクワ生まれ。ソヴィエト時代は本の挿絵を描いて生計を立てていた。ホフマン、ポー、レム、ゴーゴリ、ストルガツキー兄弟の本を初めとして何百冊もの本にイラストをつけたという。
1991年ペレミロヴォ村に移り住んで本格的なイーゼル絵画に取り組むと、まずベルギー、ドイツ、フランスで注目され、それからロシアでも高く評価されるようになった。
上の「魚の日」という作品をよく見ると、壁にピロスマニの絵が描きこまれているのがわかる。人魚のいる不思議な居酒屋空間とグルジアの宴の光景が何の違和感もなく融合していることからしても、リュバーロフがピロスマニの系譜に連なる画家であることは明らかである。
「私は自分が過去のモノを入念に選んでばかりいるノルタルジックな画家だとは思っていません。(私の絵には)1950-1960年代の細々したものもあれば、1930年代の石油コンロや立襟シャツや厚布長靴もあるし、1990年代初めのひどい行列やシャベルみたいな携帯もある。2000年代の男のストリップショーや女のサッカーもある。それに、人魚やうちの菜園で栽培した野菜といった『永遠に価値あるもの』もありますからね」と語る画家自身、とてもチャーミングな人のようだ。