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ボリス・グリゴーリエフ展

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トレチヤコフ美術館でグリゴーリエフの生誕125年を記念する特別展が開かれるとテレビで報じていたので見に行く。トレチャコフの本館ではなくエンジニア館のほうだった。
Борис Григорьев ボリス・グリゴーリエフ (1886-1939)は、「芸術の世界」に所属していた画家だが、1919年に亡命。以後、ベルリン、パリを経てアメリカに渡り、肖像画家として人気を得た。
最も有名なのは、アヴャンギャルド演出家 Всеволод Мейерхольд フセヴォロド・メイエルホリド(1874-1940)を描いた 『メイエルホリドの肖像』(1915)だろう。20世紀初頭ロシア文化の絢爛たる祝祭的気分が伝わってくるような作品で、迫力があった。


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もう1点、今回の展覧会で印象に残ったのは、作曲家 Сергей Рахманинов セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)を描いた『ラフマニノフの肖像』(1930)である。
頭部のいびつな形、異様なほどに浮き出た血管、刻みこまれた皺。ここには対象を「美化」する意図はまったく感じられない。ラフマニノフもグリゴーリエフ同様、1917年にロシアを後にして、ついに最後まで故郷に帰ることはなかった。作曲に専念することもできず、ロシアへの郷愁を抱いたまま半ば演奏活動を強要された。画家はラフマニノフの苦悩に深く共感をおぼえていたにちがいない。


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ちなみに、1920年代にグリゴーリエフが取り組んだ大作は「Лики России ロシアの面立ち」と名づけられている。лик という言葉は лицо(顔)の古い言い方で、複数形だと「特徴」という意味がある。
グリゴーリエフは、メイエルホリド、フレーブニコフ、レーリヒ、シャリャーピン、ゴーリキーらの肖像を描くことを通してロシア文化の特徴そのものを探っていたのではなかろうか。

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2011年9月17日 14:00に投稿されたエントリーのページです。

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