翻訳をしていたら、"пахать как папа Карло" という表現に出くわした。「(カルロ・パパのように)がむしゃらに働く」という意味で、 Алексей Николаевич Толстой アレクセイ・ニコラエヴィチ・トルストイ (1883-1945)の『Золотой ключик, или Приключения Буратино 金の鍵 あるいはブラチーノの冒険』 (1936)という童話から生まれた慣用表現だということがわかった。
アレクセイ・トルストイという作家がふたりいるため父称をつけて区別しているが、この童話を書いたのは、『アエリータ』(1924)の作者でソ連SFの創始者のひとりとも言われるアレクセイ・ニコラエヴィチ・トルストイのほう。
じつはこの『ブラチーノの冒険』、イタリアの作家カルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』(1883)を翻案したものである。だから「カルロ・パパ」というのは、原作者への敬意が込められているのだろう。
作中、カルロは手回しオルガンの奏者ということになっており、「しゃべる薪」を削って人形を作り、ブラチーノと名付ける。
ブラチーノは「ロシアのピノッキオ」なのだ!
(アレクセイ・トルストイ 『金の鍵 あるいはブラチーノの冒険』 絵レオニード・ウラジミルスキー、アムフォラ社、 2010年)
ブラチーノの物語の前半は、ほぼピノッキオの物語を忠実に再現しているのだが、後半がだんだん異なってきて、最後に決定的な違いが用意されている。それは、ピノッキオが最終的には人間になるのに対して、ブラチーノは最後まで人形のままでいること。
人間になることが幸せなのか、それとも人形は人形としてそれで素晴らしいのか、難しいところだ。
ブラチーノは出版された当初から子供にも大人にも大人気だったという。
人形劇、芝居、アニメ、オペラ、バレエといろいろなジャンルに広がったが、とくに有名なのは、セルゲイ・オブラスツォフの人形劇だろう。
下は、イワン・イワノフ=ワノ監督によるアニメ(1959)。