目黒の東京都庭園美術館で開かれている『皇帝の愛したガラス』展に行き、サンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館が所蔵する至宝の数々を堪能してきた。
ロシアでは、エリザヴェータ女帝(ピョートル大帝の娘で贅沢が大好きだったロマノフ朝第6代目の皇帝、在位1741-1762)の時代に、エングレーヴィング技法(ガラスの表面にレリーフ状に彫刻を施したりダイヤモンド針で線刻する技法)が発達。その後、エカテリーナⅡ世(ロマノフ朝第8代目の啓蒙専制君主、在位1762-1796)治世下の1977年に、女帝の側近だったポチョムキン公爵がガラス工場を貰い受けてガラス産業を拡充した。のちにこれが「帝室ガラス工場」となる。
面白いのは、「ロシアのレオナルド・ダ・ヴィンチ」ともいえる博学の天才 Михаил Ломоносов ミハイル・ロモノーソフ(1711-1765)が、ゴールド・ルビー・ガラスを発見したこと。ガラスを金の塩化物とともに溶融していったん冷やし再び加熱することで得られる鮮やかな赤が特徴の「色ガラス」である。
ロモノーソフといえば、科学者で天文学者(金星に大気圏があることを予測したという)、絵も描けば詩も書いたうえ、ロシア語文法書を残した教育者でもある。1755年にモスクワ大学を創設したので、МГУは今でも「ロモノーソフ名称モスクワ国立大学」というのが正式な名称だ。
上にある美術展のポスター右側に写っているのは1810-1820年代に帝室ガラス工場で作られた花器だが、まさにそのゴールド・ルビー・グラスにエングレーヴィングが施されている。
ちなみに、左側の青と金の美しいガラスは、18世紀後半にやはり帝室ガラス工場で制作された栓付きデカンター。よく見ると、王冠の絵の下にМЯというロシア文字のモノグラム(組合せ文字)があるが、いったいだれのイニシャルなのだろう?
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http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/glass/index.html