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栗山民也演出 『太陽に灼かれて』

2011年7月24日(日)から8月9日(火)まで天王洲・銀河劇場にて、栗山民夫演出による『太陽に灼かれて』が上演される。キャストは成宮寛貴、鹿賀丈史、水野美紀。東京公演の後、愛知、兵庫でも公演が予定されている。

これは、ロシアのНикита Михалков ニキータ・ミハルコフ監督が1994年に制作したロシア・フランス合作映画 『 Утомлённые солнцем 太陽に灼かれて 』 (カンヌ国際映画祭最高賞グランプリ受賞)のシナリオをピーター・フラナリーが脚色、舞台化したもの。ロンドンで大当たりしたという。

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物語は、1936年のモスクワ郊外を舞台に、ロシア革命の英雄だったコトフとその妻マルーシャ、マルーシャの幼なじみでНКВД(秘密警察)で働くミーチャの3人をめぐって繰り広げられる。狂気を帯びたスターリン時代の粛清という政治的背景と、恋愛と嫉妬に根ざした個人的な復讐劇とが絡みあい、終盤はとくに息をのむ展開だ。
自らコトフ大佐を演じるミハルコフと、ミーチャ役の人気俳優 Олег Меншиков オレーグ・メンシコフが、迫真の演技を競いあっている。

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さらに興味深いのは、恐怖と絶望の時代を象徴するかのような哀切を帯びたタンゴがドラマの悲劇性をいっそう際立たせていること。このタンゴは1930年代のソ連で実際に流行っていたもので、「Утомлённое солнце(疲れた太陽)」という。映画のタイトルと言葉は似ているが、意味が違う。映画のほうは逐語訳すると「Утомлённые солнцем(太陽によって疲れさせられた人々)」となる。
「太陽」が共産主義の理想をあらわしているとするなら、太陽はその圧倒的な威力で人々を疲弊させたということか。

タンゴは Ежи Петербургский イェジー・ペテルブルクスキー作曲、Иосиф Альвек ヨシフ・アリヴェク作詞で、Александр Цфасман アレクサンドル・ツファスマンのジャズ・オーケストラによって演奏された。

 Утомлённое солнце
 Нежно с морем прощалось,
 В этот час ты призналась,
 Что нет любви.

 ♪ 疲れた太陽が
 そっと海と別れた。
 そのとき君は告白した、
 愛なんてないの、と。

1937に録音されたレコードをここで聴くことができる。
 ↓ 
http://www.youtube.com/watch?v=8cTLRYTVvl8


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2011年7月18日 14:00に投稿されたエントリーのページです。

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