ロシアの作曲家 Сергей Прокофьев セルゲイ・プロコフィエフ (1891-1953)が小説を書いていた。しかもロシア革命直後の1918年日本を経由してアメリカへ渡る最中に!
それら短編と日本に滞在していたときの日記が1冊の本になっている。『プロコフィエフ短編集』サブリナ・エレオノーラ・豊田菜穂子訳(群像社、2009)だ。
中でも面白いのは短編「彷徨える塔」。パリのエッフェル塔が突然歩きだすというアイディアもユニークだが、パニックに陥る人々や大変なスピードで歩くエッフェル塔を追いかける「変人」学者のどたばた喜劇の様相といい、擬人法を突き抜けて塔が空を飛ぶ愉快な場面といい、とぼけたユーモアと魅力にあふれている。
プロコフィエフが「戦争も革命もない、花咲き匂う国」日本に滞在し、束の間とはいえ日本の文化人と交流したりコンサートを開いたりしてロシアの最先端の芸術的息吹きを伝えるとともに、こんな独創的でチャーミングな物語を書いていたとは、何か歴史の思いがけない贈り物のような気がする。
ちなみに、今年はプロコフィエフ生誕120周年にあたり,11月1日(水)18:30より紀尾井ホールにて記念音楽祭「プロコフィエフへのオマージュ」が催されるという。
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