古川聡さんが、Союз ソユーズ(「結束、結合」を意味する)宇宙船で国際宇宙ステーションに旅立った。
今年は、1961年にソ連のユーリイ・ガガーリンがВосток ヴォストーク(「東方」を意味する)宇宙船で人類史上初めて宇宙飛行に成功してからちょうど50年目という記念すべき年にあたる。
Юрий Гагарин ユーリイ・ガガーリン (1934-1968)は、『 Дорога в космос 宇宙への道 』という著書の中で、宇宙から見た地球の姿をこう描写している。
Лучи его (Солнца) просвечивали через земную атмосферу, горизонт стал ярко-оранжевым, постепенно переходящим во все цвета радуги: к голубому, синему, фиолетовому, чёрному. Неописуемая цветовая гамма! Как на полотнах художника Николая Рериха!
「やがて地球の大気をとおして太陽の光線がもれてきた。地平線上が明るいオレンジ色に輝きはじめた。空色、青色、すみれ色、黒と移りかわる七色の虹のかぎろい。とても言葉にはつくせない色の諧調! まるでニコライ・レーリヒの絵を見るようだ!」 『宇宙への道』江川卓訳(新潮社、1961)
ここに出てくる Николай Рерих ニコライ・レーリヒ (1874-1947) とは、サンクト・ペテルブルグ出身の画家で神秘思想家、探検家。1913年に初演されたバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の『春の祭典』(作曲ストラヴィンスキー)で台本や美術を担当したアーティストでもある。チベット、ヒマラヤを訪れて描いた作品が素晴らしい。
いったいガガーリンが念頭に置いていたのは、レーリヒのどの作品だったのだろう。
『Превыше гор (山々よりはるかに高く)』
『Гималаи (ヒマラヤ)』
『Еверест (エヴェレスト)』
『Гималаи. Голубые горы (ヒマラヤ、青い山々)』
『Книга жизни (人生の書)』
『Розовые горы (バラ色の山々)』
『Жемчуг исканий (探求の真珠)』
『Сокровища снегов(雪の宝物)』
ちなみに、自分のことをユーリイ・ガガーリンの実の母だと思いこんでいる(らしい)女性を主人公にしたニーナ・サドゥールの奇想天外な短編「空のかなたの坊や」を、『新潮』 2009年6月号で翻訳・紹介した。サドゥールの天を突き地を裂く想像力がフル回転しているような作品だ。