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「ロシアの女」シリーズ

『日本経済新聞』に、美術の「十選」というシリーズがある。特定のテーマのもとに10作品選び、連載で紹介していく欄だ。2010年6月から7月にかけて、この欄で「ロシアの女」シリーズを担当させていただいた。その中からいくつか紹介しよう。
描かれているのは、農婦、女優、公爵夫人、画家、商人の妻、労働者とさまざま。


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Алексей Венецианов アレクセイ・ヴェネツィアーノフ(1780-1847)『Девушка с косой и граблями (Пелагея) (鎌と熊手を持つ農婦(ペラゲーヤ))』(1824、ロシア美術館)
ヴェネツィアーノフは、ロシアにおける風俗画の創始者と言われる。農村に移り住み、田園風景や農民たちの肖像を手がけた。前景に置かれた大きな手が、ペラゲーヤの勤勉さと逞しい生命力をあらわしているかのようだ。


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Михаил Врубель ミハイル・ヴルーベリ(1856-1910)『Царевна-Лебедь(白鳥の王女)』(1900、トレチャコフ美術館)
プーシキンの叙事詩『サルタン王物語』を作曲家のリムスキー=コルサコフがオペラにしたとき、ヴルーベリが美術を担当し、画家の妻でオペラ歌手のナジェージダ・ザベラが王女を演じた。ここには、白鳥が王女に変身するその瞬間が刻みこまれている。


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Валентин Серов ワレンチン・セローフ(1865-1911)『Портрет княгини О.К. Орловой(オルロワ公爵夫人の肖像)』(1911、ロシア美術館)
肖像画家として名高いセローフの最高傑作とされている絵。オルロワ夫人はペテルブルグ社交界きっての麗人と言われていたが、たいへんな気取り屋だったらしく、セローフはあまり被写体に好意的ではなかったようだ。


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Зинаида Серебрякова ジナイーダ・セレブリャコワ(1884-1967)『За туалетом. Автопортрет(身支度、自画像)』(1909、トレチャコフ美術館)
セレブリャコワが展覧会に初めて出品して一躍注目を浴びた作品。女性が被写体でしかなかった時代が終わり、ようやく描く主体として活躍できるようになった。その喜びが率直にのびのびと表現されているように感じられる。


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Борис Кустодиев ボリス・クストージエフ(1878-1927)『Купчиха за чаем(お茶を飲む商人の妻)』(1918、ロシア美術館)
あまりにも有名な絵だが、豊饒な食卓を強調しながら、遠くに「古き良きロシア」を思わせる風景を配して、一種神話的な雰囲気を醸しだしている。商人の妻の肩のラインがサモワール(ロシア式湯沸かし器)の滑らかな輪廓と呼応しているとは言えないだろうか。


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Кузьма Петров-Водкин クジマ・ペトロフ=ヴォトキン(1878-1939)『1918 год в Петрограде (Петроградская мадонна)(1918年ペトログラードで(ペトログラードのマドンナ))』(1920、トレチャコフ美術館)
革命直後、プロレタリアートとおぼしき若い母親が赤ん坊をひしと抱きしめている。母子の姿は、聖母マリアと幼いキリストを描いたイコン(聖像画)を思わせる。この絵に「ペトログラードのマドンナ」という副題がつけられているのも頷ける。

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2011年5月30日 16:35に投稿されたエントリーのページです。

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