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【お知らせ】HPで読める卒業論文

2010年度の沼野ゼミ卒業論文は粒ぞろいだったが、東京外国語大学のHPに次の2本が掲載されることになった。

田中大輔 『ダニイル・ハルムスの生涯と美学――前衛が目指したリアルな芸術――』
これは、ペテルブルグ出身の「不条理文学の旗手」ともいうべき作家ダニイル・ハルムス(1904-1942)の数奇な生涯を紹介し、作家としての全体像を①前衛グループ「オベリウ」での活動、②児童文学作家としての活動、③不条理掌編群の作者としての活動と3つに分けて考察した卒論。
ハルムスの創作の根底にある「物語制度の否定」が秩序や論理の崩壊を目指すものとなったこと、「喪失と再獲得」こそが世界を認識するハルムスの手法だったことなどが魅力的な言葉で語られている。
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http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/kyoumu/doc/yusyu22_tanaka.pdf


河崎裕介 『黒澤明とドストエフスキー』
これは、黒澤明監督(1910-1998)の映画作品にロシアの作家フョードル・ドストエフスキーの影響がどのような形で現われているかということを詳細に論じた卒論。
ドストエフスキーの『白痴』を原作に「実写化」した『白痴』のみならず、黒澤の他の作品、たとえば『酔いどれ天使』や『生きる』や『赤ひげ』などにも広範囲にわたってドストエフスキー作品の引用、暗示、示唆、借用が見られることを明らかにするとともに、ドストエフスキー受容の考察を通じて黒澤明自身の「作家性」を浮き彫りにしている。
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http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/kyoumu/doc/yusyu22_kawasaki.pdf


なお、前田和泉ゼミ所属の大石千恵子 『セルゲイ・パラジャーノフ――その生涯と映画世界――』は、アルメニアの映画監督セルゲイ・パラジャーノフ(1924-1990)の作品におけるシンボルを丁寧に読み解いたもので、完成度とレベルの非常に高い卒論だ。
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http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/kyoumu/doc/yusyu22_ooishi.pdf


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2011年5月16日 11:36に投稿されたエントリーのページです。

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