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『ピエリア』 外大生にすすめる本

東京外国語大学出版会発行の冊子 『pieria(ピエリア)』(2011年春号)は情報満載! 
外大の先生たちの知恵袋に詰まっている膨大な知識の一端を垣間見ることができる。図書館などで無料配布中。
この中の「外大生にすすめる本」で私があげたのは現代ロシア文学から選んだ次の3冊だが、はたして「暗くて重くて難しい」というロシア文学のイメージ(三重苦)を払拭できるか?

セルゲイ・ドヴラートフ 『かばん』 ペトロフ=守屋愛訳(成文社、2000年)。
伝説的な亡命作家ドヴラートフ(1941―1990)の繊細にしてどこか切ないユーモアに満ちた自伝的短編集。スーツケースたったひとつで出国することになった「ぼく」が、スーツケースに入っていた靴下だの、ベルトだの、ジャンパーだの、帽子だのにまつわる物語を語っていくというそのアイディアが抜群だ。


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ヴィクトル・ペレーヴィン 『チャパーエフと空虚』 三浦岳訳(群像社、2007年)。
現代ロシアで圧倒的な人気を誇る作家ペレーヴィン(1962年生れ)の代表的長編。ロシア革命後の内戦と現代の精神病院と妄想世界という重層的な小説空間を、スピード感あふれる文体に導かれるまま彷徨っていると、どれが現実でどれが夢かわからなくなる。めくるめくゲーム感覚を味わいたいという人にお誂え向き。 


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Андрей Курков. Пикник на льду. Харьков: Фолио. 2009.
ウクライナ出身の越境作家クルコフ(1961年生れ)の人気小説(邦訳のタイトルは『ペンギンの憂鬱』)。わりと平易なロシア語なので、ロシア語を勉強している人はぜひ原書でどうぞ。キエフを舞台に、主人公の分身のような憂鬱症のペンギン(ミーシャ!)を巻きこんで繰り広げられる物語はミステリアスで、不条理で、とても魅力的だ。

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2011年4月25日 15:13に投稿されたエントリーのページです。

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